セッション情報 ワークショップ14(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

患者にやさしい上部消化管内視鏡検査の工夫

タイトル 内W14-9:

心不全リスク別の経口・経鼻内視鏡検査の安全性の検討

演者 結城 美佳(出雲市立総合医療センター・内科)
共同演者 駒澤 慶憲(出雲市立総合医療センター・内科), 雫 稔弘(出雲市立総合医療センター・内科)
抄録 様々な基礎疾患を有する受検者においては上部消化管内視鏡検査中の呼吸・循環動態変動のため心筋虚血などの合併症に対する十分な配慮が必要である。最近注目されている細径スコープを用いた経鼻内視鏡検査は、受検者の受容性だけでなく、呼吸・循環動態に対して安全性が高いとされており、これまでに我々は呼吸状態不良なハイリスク受検者に対する経鼻内視鏡検査の安全性を報告してきた。【目的】今回受検者の年齢および心不全リスク別の経口・経鼻内視鏡中の循環変動について明らかにする。【方法】当院で経口・経鼻内視鏡検査を受検したそれぞれ150人に対し、経口内視鏡(O群)、経鼻内視鏡(N群)として前向き検討を行った。検査直前の脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を測定し、受検者の潜在的心不全リスク別に分類、経口・経鼻内視鏡検査中の血圧と脈拍の変化を測定し、心筋酸素消費量と相関するRate pressure product(RPP)を内視鏡別、心不全リスク別、年齢別に検討した。また検討期間中に経口・経鼻内視鏡検査どちらも受検した18人に対し内視鏡検査中の自律神経変動の評価を行った。【成績】受検者平均年齢はO群=71.1歳、N群72.4歳、BNP平均はO群161.4pg/ml、N群152.6pg/mlであった。両群とも年齢と検査中のRPP変化に相関関係を示さなかった。しかしBNP別の検討では、BNP100以上の心不全ハイリスク受検者においてO群の検査中RPPは検査前に対し有意に上昇し、N群ではBNPに関わらず検査中の有意なRPP上昇を認めなかった。またBNP100以上の受検者では経口内視鏡検査中のRPP上昇は経鼻内視鏡検査中に比べ有意に上昇した。内視鏡検査中の自律神経変動の測定結果から、経鼻内視鏡に比べ経口内視鏡検査では検査中の交感神経負荷が大きく、このことが心不全リスクの高いものでより顕著に循環動態変動をきたすことに影響している可能性が示唆された。【結論】経鼻内視鏡は交感神経負荷が少なく、心不全リスクの高い受検者に対し循環変動の少なさの面からより安全に施行できる検査である。
索引用語 経鼻内視鏡, 循環動態変動