セッション情報 一般演題

タイトル o-045:

大腸癌による大腸狭窄を伴い治療に難渋した偽膜性腸炎の一例

演者 山田 和俊(加登病院 消化器内科)
共同演者 加賀谷 尚史(金沢大学附属病院 消化器内科), 亀田 正二(加登病院 消化器内科), 加登 康洋(加登病院 消化器内科)
抄録 【症例】82歳女性.下痢のため近医を受診しレボフロキサチンを処方されていた.その後下痢・腹痛の増悪と下血を認め,当院を受診した.下部大腸内視鏡検査にてS状結腸に内腔をほぼ占拠する大腸癌を認め,口側への内視鏡挿入は困難であった.またその肛門側の粘膜には偽膜の形成を認めており,便培養から毒素陽性のC.difficileが検出され,偽膜性腸炎と診断した.【入院後経過】腸閉塞症状は認めていなかったため,バンコマイシン2g/dayの内服で加療を開始したが,発熱や下痢などの症状は持続し,内視鏡上も偽膜性腸炎の改善は認めなかった.大腸癌による通過障害のため,経口投与のみでは病変への薬剤分布が不十分であると判断し,バンコマイシンを注腸投与に切り替え,メトロニダゾールの内服1g/日を併用した.しかしバンコマイシンの注腸投与は本人の苦痛もあり十分に施行できず,偽膜性腸炎も遷延していたため,通過障害の解除目的に腫瘍狭窄部に大腸ステントを挿入した.ステントの拡張により通過障害は改善し,以後偽膜性腸炎は改善を認めた.後日近医外科へ転院し,S状結腸癌に対する手術を施行された.【考察】偽膜性腸炎では腸管への薬剤分布が不十分となり,治療に難渋するケースがある.麻痺性イレウスに対してはバンコマイシンの注腸投与やメトロニダゾールの点滴が有効とされるが,本例のように腫瘍による閉塞に対しては,大腸ステント挿入による通過障害の改善も有効な治療と考えられ,若干の文献的考察を加え報告する.
索引用語 偽膜性腸炎, 大腸ステント