セッション情報 一般演題(研修医(卒後2年迄))

タイトル o-048:

保存的加療で軽快した門脈ガス血症の2例

演者 清水 大樹(公立松任石川中央病院 消化器内科)
共同演者 西谷 雅樹(公立松任石川中央病院 消化器内科), 友影 美貴(公立松任石川中央病院 消化器内科), 高畠 央(公立松任石川中央病院 消化器内科), 田中 章浩(公立松任石川中央病院 消化器内科), 浅井 純(公立松任石川中央病院 消化器内科), 卜部 健(公立松任石川中央病院 消化器内科), 宮永 章平(公立松任石川中央病院 外科), 能登 正浩(公立松任石川中央病院 外科), 石井 要(公立松任石川中央病院 外科), 竹田 利弥(公立松任石川中央病院 外科), 谷 卓(公立松任石川中央病院 外科), 八木 雅夫(公立松任石川中央病院 外科)
抄録 【背景】門脈ガス血症(portal venous gas; 以下, PVG)は, 腸管壊死などの重篤な疾患の際に認められる比較的稀な病態で, 死亡率も高いことから予後不良の徴候とされてきた. しかし近年では画像診断の発展・進歩に伴い少量のガスでも診断が可能となったため, 保存的加療で軽快した門脈ガス血症の報告も増加してきている. 【症例1】70歳代, 男性. 糖尿病, 陳旧性脳梗塞で当院通院中. 急性発症の心窩部痛で当院に救急搬送された. CTで肝内門脈に樹枝状のガス像を認めたが腸管壁にはガス像を認めなかった. 造影CTでは腸間膜動脈に血栓を認めず, 腸間壁の造影効果は保たれており, 非閉塞性腸間膜虚血(non-occlusive mesenteric ischemia; NOMI)が疑われた. 腹膜刺激徴候を認めず腹部所見に乏しいことから緊急手術は行わず保存的加療を開始して厳重な経過観察を行った. 入院後より腹痛は改善傾向で, 第3病日のCTでPVGの消失を認めた. 第7病日より経口摂取を再開した. 第21病日の大腸内視鏡検査で回腸に多発する浅い地図状潰瘍と軽度狭窄などの虚血性変化を認めた. その後も経時的に症状, 検査所見の改善を認め, 第26病日退院した. 【症例2】70歳代, 男性. C型慢性肝炎で当院消化器内科通院中. 嘔吐と腹痛で近医を受診し, 腹部X線写真で小腸ガスと鏡面形成を認め, イレウスの疑いで同日当院紹介受診した. CTで肝内門脈に樹枝状のガス像と腸間膜の脂肪織濃度上昇を認めた. 発症12時間後のCTではPVGの消失を認めており状態は落ち着いていたが, 小腸壊死を疑い手術を行った. 開腹所見は小腸の発赤と著明な浮腫を認めたが, 明らかな小腸壊死は認めず腹腔内洗浄のみで閉腹した. その後保存的加療を行い, 第4病日からは症状軽快した. 第15病日に経口摂取再開後も再燃なく, 第27病日退院した. 【結語】PVGは重篤な病態と考えられているが, 保存的加療で軽快する例も認められ, 慎重な経過観察が重要である. 今回我々は保存的加療で軽快したPVGの2例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語 肝臓, 門脈