セッション情報 一般演題

タイトル O-012:

憩室がその発生と破裂とに関与したと考えられた大腸リンパ管腫の1例

演者 善田 貴裕(公立学校共済組合北陸中央病院 内科)
共同演者 萩下 友美(公立学校共済組合北陸中央病院 内科), 守屋 真紀雄(公立学校共済組合北陸中央病院 外科), 亀水 忠(公立学校共済組合北陸中央病院 外科), 清水 淳三(公立学校共済組合北陸中央病院 外科), 中西 功(アルプ病理研究所)
抄録 症例は55歳、男性。27ヶ月前に肝弯曲部で大腸憩室炎を起こしたが、保存的治療にて軽快している。2013年5月の検診にて貧血を指摘されたために当科を受診した。上部消化管には異常を認めなかったが、大腸内視鏡検査では肝弯曲部に約5mm径、低い周堤を伴い、中央の陥凹部より自然出血する病変を認めた。陥凹部からの生検はGroup 1であったが、IIc陥凹型ないしは微小Borrmann 3型の大腸癌が否定できず、貧血のコントロールの必要性から結腸右半切除術が施行された。病理学的検討では大腸癌は否定され、病変は自潰した大腸リンパ管腫と診断された。この大腸リンパ管腫の直下には憩室の存在を示唆する固有筋層の断裂を認め、この断裂を介して正常大腸粘膜とリンパ管腫が漿膜下層へと逸脱していた。残存するリンパ管腫により低い周堤が成され、さらには、大腸粘膜とリンパ管腫の逸脱牽引によって中央の陥凹部とリンパ管腫に裂創が生じ、これが出血源と診断された。切除標本の他部には憩室を認めず、リンパ管腫と憩室炎は同一部位に発生したものと考えられた。粘膜下腫瘍像を成すリンパ管腫の存在下では憩室炎の発症は考え難く、憩室炎による局所のリンパの鬱滞がリンパ管腫の発生に関与した可能性が疑われた。本例の臨床経過や病理所見からは、大腸リンパ管腫の発生と自潰の両者に憩室が関与したものと推察されるとともに、自潰したリンパ管腫の肉眼所見は陥凹型大腸癌との鑑別を要するものと考えられたことより、文献的考察を加え報告する。
索引用語 大腸リンパ管腫, 大腸憩室