セッション情報 一般演題

タイトル O-020:

重症急性膵炎における膵壊死進展過程の造影超音波検査による検討

演者 時光 善温(富山赤十字病院 消化器内科)
共同演者 植田 優子(富山赤十字病院 消化器内科), 品川 和子(富山赤十字病院 消化器内科), 小川 加奈子(富山赤十字病院 消化器内科), 圓谷 朗雄(富山赤十字病院 消化器内科), 岡田 和彦(富山赤十字病院 消化器内科)
抄録 急性膵炎は膵腺房細胞内でのプロテアーゼの活性化に始まるが、膵壊死に至るには膵虚血や微小血栓形成など血流障害が関与している。壊死性膵炎では、造影CTにおける膵実質の造影不良域に一致して膵内外動脈のvasospasmが特徴的であるとされる。膵血流、膵壊死進展を評価することで早期に動注療法を開始し救命率を向上できる可能性もある。造影CTは急性膵炎には必須であるが、重症急性膵炎では腎機能や全身管理を優先し造影CTを繰り返し行うことは困難である。今回、われわれは造影超音波検査(CEUS)を頻回におこない膵血流障害を評価した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
造影CTで広範な膵造影不良域を認めた重症急性膵炎の症例では、ナファモスタットメシル酸塩と抗菌剤の動注療法を開始し、day2に造影CTで維持されていた背側膵動脈血流が、CEUSでday7まで確認できたもののそれ以降途絶した。膵残存部分には血流が保たれ壊死を逃れていることが3週以上にわたり観察できた。壊死の拡大が危惧された重症急性膵炎の症例では、CEUSで発症15時間後の膵体部に造影不良域を認め、30時間後にはこの造影不良域周囲に弱い造影不良域の出現を認め、壊死の拡大が危惧されたため、動注療法を開始した。TIC解析にて、新たな造影不良域は、非壊死部分と壊死部分の間のintensityであり、膵炎軽快後の造影CTでは膵壊死に陥っておらず可逆的な血流低下領域であったことが示唆された。不可逆的な血流障害に至る前に動注療法を開始できたことが奏功したと考えられる。
これらの結果とこれまでの基礎的な微小血管構築を検討した報告などから、膵動脈のvasospasmが毛細血管や小葉内動脈などの途絶を起こし、しだいに中枢側の動脈の不可逆的障害に至り広範囲の実質壊死に進展すると考えられた。急性膵炎では時期を逸することなく診断、治療を行うことで膵壊死の進展を阻止できると考えられ、診断や治療効果の評価においては造影CTだけでなくCEUSの役割も大きい。
索引用語 急性膵炎, 膵壊死