セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル O-022:

肝細胞癌との鑑別を要したadrenal rest tumorの一例

演者 石田 晃介(金沢大学附属病院 消化器内科)
共同演者 堀井 里和(金沢大学附属病院 消化器内科), 中井 亮太郎(金沢大学附属病院 消化器内科), 木田 明彦(金沢大学附属病院 消化器内科), 吉田 真理子(金沢大学附属病院 消化器内科), 熊谷 将史(金沢大学附属病院 消化器内科), 飯田 宗穂(金沢大学附属病院 消化器内科), 北原 征明(金沢大学附属病院 消化器内科), 大石 尚毅(金沢大学附属病院 消化器内科), 砂子阪 肇(金沢大学附属病院 消化器内科), 島上 哲朗(金沢大学附属病院 消化器内科), 鷹取 元(金沢大学附属病院 消化器内科), 荒井 邦明(金沢大学附属病院 消化器内科), 北村 和哉(金沢大学附属病院 消化器内科), 加賀谷 尚史(金沢大学附属病院 消化器内科), 山下 太郎(金沢大学附属病院 消化器内科), 酒井 佳夫(金沢大学附属病院 消化器内科), 山下 竜也(金沢大学附属病院 消化器内科), 水腰 英四郎(金沢大学附属病院 消化器内科), 本多 政夫(金沢大学附属病院 消化器内科), 金子 周一(金沢大学附属病院 消化器内科)
抄録 【症例】80代女性。高血圧、脂質異常症にて近医通院中であった。下腹部痛があり腹部CT検査を行ったところ、肝S7に33mm大の腫瘍を認め、精査加療目的に当院紹介となった。造影CT、造影MRI検査では肝S7の右副腎と接する部位に、脂肪成分を有する多血性の腫瘍を認めた。血液検査では肝逸脱酵素は正常で、γ-GTPのみ軽度上昇していたが、肝炎ウイルスマーカーは陰性であり、明らかな背景肝疾患は認めなかった。血管造影検査では、腫瘍はCTAPで欠損、CTHAで早期濃染し、後期相、平衡相で低吸収だが、排血路として右副腎静脈への還流を認め、典型的な中分化肝癌とは異なる所見であった。副腎の内分泌学的検査はいずれも正常範囲内であったが、131I-アドステロールシンチでは腫瘍への集積を認めた。PET-CTやMIBGシンチでは腫瘍への集積は認めなかった。以上の所見より、肝adrenal rest tumorと診断した。腫瘍径も大きく、悪性腫瘍の含有の可能性を否定できなかったため、当院外科にて腹腔鏡下肝部分切除術を施行した。肉眼的には、腫瘍は境界明瞭な黄金色腫瘤であった。組織学的には、淡明な泡沫状細胞質を示す上皮がシート状に配列する小型充実性胞巣が増生し、好酸性胞体を有する上皮細胞集団が混在しており、副腎皮質類似の細胞が認められた。核異型は認めず、核分裂像もほとんど認めなかった。また、脈管侵襲は認めず、被膜形成はみられないが周囲との境界は明瞭で浸潤傾向に乏しく、悪性を示唆する所見は認めなかった。また、背景肝には線維化や炎症所見は認めず、正常肝であった。以上の病理結果もふまえ、肝adrenal rest tumorと確定診断した。【考察】正常副腎以外に認められる副腎組織はadrenal rest、副副腎、異所性副腎組織などとよばれ、腹腔内、後腹膜、中枢神経(脳および脊髄)、肺をはじめとする様々な部位に存在するが、肝原発のものは極めて稀である。術前診断では肝細胞癌と診断され手術されるケースも多いが、本症例は131I-アドステロールシンチが有用で肝adrenal rest tumorと診断し得た貴重な一例と思われたので、若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 肝adrenal rest tumor, 副腎遺残腫瘍