セッション情報 一般演題(研修医(卒後2年迄))

タイトル O-026:

クローン病治療中に、小腸癌の再発を来した一例

演者 寶田 真也(富山大学附属病院 臨床研修センター)
共同演者 植田 亮(富山大学 第三内科講座), 三原 弘(富山大学 第三内科講座), 藤浪 斗(富山大学 第三内科講座), 西川 潤(富山大学 第三内科講座), 安藤 孝将(富山大学 第三内科講座), 梶浦 新也(富山大学 第三内科講座), 細川 歩(富山大学 第三内科講座), 杉山 敏郎(富山大学 第三内科講座), 吉田  徹(富山大学 第二外科講座), 塚田 一博(富山大学 第二外科講座), 林 伸一(富山大学 病理診断学講座)
抄録 [背景] クローン病患者における小腸癌合併率は低く、本邦における報告例は30例程度である。しかし、クローン病患者数の増加に伴い、小腸癌の合併が新たな問題となることが予想される。今回われわれは、免疫調整剤治療後に急激な小腸癌増悪により死亡したクローン病の一例を経験したので報告する。[症例]56歳の男性。20歳時に小腸大腸型クローン病と診断され、加療されていた。51歳時にイレウスを発症し、保存的治療で改善せず、外科的治療が行われた。病理結果より高~中分化型小腸癌(pStage II)と診断された。S-1による術後補助化学療法を行われたが副作用のため中止となり、以後クローン病に対してはmesalazine、PSL内服により加療された。56歳時に下痢回数の増加を認め、内視鏡所見よりクローン病の増悪と考えられた。CT上腫瘍性病変は認められず、免疫調整剤の導入は可能と考え、Azathioprine (以下AZA)を導入後、infliximabを併用した。両剤導入後、臨床症状は改善傾向となり、CDAIスコアも低下した。しかし、AZAの導入から5ヶ月後より腹痛が出現し、腹部CT検査を施行したところ、7cm大の腹腔内腫瘤、及び多発性肝腫瘤を認め入院となった。肝生検の結果は低分化型腺癌であったため、小腸癌の術後再発と考えmFOLFOX6療法を行った。しかし、PS低下のため2コース目以降は施行できず、入院1ヶ月後に死亡した。剖検結果から低分化型小腸癌(腹膜転移、肝転移)と診断された。[考察]リンパ腫や一部の固形がんに関して免疫調整剤による発生率の上昇は多く報告されているが、免疫調整剤と小腸癌発生との関連性はいくつかの研究報告から否定的である。クローン病に合併するイレウスの多くはクローン病の増悪によるものであるが、小腸癌の合併も念頭におく必要があると考えられた。
索引用語 クローン病, 小腸癌