セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル O-027:

抗ミトコンドリア抗体陰性、抗核膜抗体陽性であった原発性胆汁性肝硬変の一例

演者 大和 雅敏(国立病院機構金沢医療センター 消化器科)
共同演者 太田  肇(国立病院機構金沢医療センター 消化器科), 羽柴  智美(国立病院機構金沢医療センター 消化器科), 梶 喜一郎(国立病院機構金沢医療センター 消化器科), 林 智之(国立病院機構金沢医療センター 消化器科), 矢野  正明(国立病院機構金沢医療センター 消化器科), 丸川  洋平(国立病院機構金沢医療センター 消化器科), 川島  篤弘(国立病院機構金沢医療センター 病理部), 原田 憲一(金沢大学形態機能病理学), 中沼 安二(金沢大学形態機能病理学)
抄録 【症例】60歳代女性、ビール700ml/日・30年の飲酒歴がある患者。現病歴では、以前から会社の健康診断にてγ-GTPの高値を指摘されていたが節酒の指導のみで精査は受けていなかった。関節痛にて近医を受診し精査された際に抗核抗体が陽性であったため、肝障害に関して自己免疫疾患の関与も疑われ当科紹介となった。来院時検査では、γ-GTP高値(168 IU/l)、ALP正常(296 IU/l)、B型・C型肝炎ウイルスマーカー陰性、抗核抗体80倍でSpeckled pattern、抗ミトコンドリア抗体及びM2抗体はいずれも陰性であった。後に抗核抗体が核膜型であることが判明した。画像所見では脂肪肝及び軽度の肝変形を認め慢性肝疾患が示唆された。肝障害の原因精査のため肝生検を施行したところ、リンパ球・形質細胞を主体とする胆管周囲性の炎症が目立ち、一部には明らかな胆管障害・破壊像が認められ慢性非化膿性破壊性胆管炎の像を呈していた。門脈域における線維化は軽度で、胆管消失やオルセイン陽性顆粒は認められなかった。またinterface肝炎の所見は軽度であった。常習飲酒家であったがアルコール性肝炎の所見は乏しかった。病理診断として原発性胆汁性肝硬変(PBC)が最も疑われ、中沼分類の活動度CA3/HA1,病期stage 2と診断した。現在UDCA 600mg/日内服を開始し加療中である。【考察】PBCの診断には感度・特異度が共に高い抗ミトコンドリア抗体が有用であるが、本例でみられた抗核膜抗体も陽性率は20%程度と高くないもののPBCに特異的な自己抗体として報告されている。また、抗核膜抗体のなかでも抗gp210抗体は肝不全型PBCの進行に関して強い危険因子である可能性が示唆されており、陽性症例の経過観察には十分注意が必要である。【まとめ】抗ミトコンドリア抗体陰性、抗核膜抗体陽性のPBC症例を経験した。当院での抗核膜抗体陽性PBC症例のまとめ及び若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 PBC, 抗核膜抗体