セッション情報 一般演題(研修医(卒後2年迄))

タイトル O-028:

膵頭部腫瘤に対するEUS-FNAが治療方針決定に有用であった自己免疫性膵炎の一例

演者 村上 智美(国立病院機構 金沢医療センター)
共同演者 矢野 正明(国立病院機構 金沢医療センター), 大和 政敏(国立病院機構 金沢医療センター), 羽柴 智美(国立病院機構 金沢医療センター), 梶 喜一郎(国立病院機構 金沢医療センター), 林 智之(国立病院機構 金沢医療センター), 丸川 洋平(国立病院機構 金沢医療センター), 太田 肇(国立病院機構 金沢医療センター)
抄録 【はじめに】膵頭部腫瘤を認めた場合、画像診断のみでは膵頭部癌と腫瘤形成性膵炎の鑑別は困難であることが多い。EUS-FNAを行うことで組織学的診断が可能であり、治療方針決定に有用である例が存在する。今回我々は当初膵頭部癌が疑われたが、EUS-FNAにて自己免疫性膵炎と判明し手術が回避できた一例を経験したので報告する。【症例】60歳代男性。20XX年7月より心窩部痛と体重減少にて紹介医を受診した。腹部超音波検査及び腹部造影CTにて膵頭部癌が疑われ当院外科受診となった。8月下旬に膵頭十二指腸切除術が予定されたが、診断確定のためEUS-FNA依頼にて当科紹介となった。8月6日に膵頭部腫瘤に対して22G針を用いてEUS-FNAを施行したところ、細胞診はClass II、組織診では腺細胞は萎縮を示し所々で繊維浮腫の間質が認められた。軽度のリンパ球浸潤を伴い、形質細胞が浸潤するごく一部の領域ではIgG4/IgG比が50-70%であり、自己免疫膵炎の可能性が示唆された。また同日に施行した血液検査ではCA19-9 39U/ml、CEA 2.7ng/mlであったが、血清IgG4は329.0mg/dlと高値であった。膵癌の否定ならびに自己免疫性膵炎の組織学的診断確定のため、8月20日に19G針を用いて再度EUS-FNAを施行した。組織診ではリンパ球、形質細胞の浸潤を認め、IgG4陽性細胞は120個/HPF、IgG4/IgG 比が90%以上であり自己免疫性膵炎が強く疑われた。8月26日に施行したPET-CTでは膵頭部に強くFDG集積が認められるとともに、膵全体にびまん性のFDG集積が認められた。その他肺門縦隔、右鎖骨上窩、左顎下に多発性のリンパ節腫大も認められた。これらの所見から自己免疫性膵炎疑いにて、9月3日からプレドニゾロン35mg/日を導入した。2週間後の造影CTとMRIによる効果判定では、膵頭部腫瘤の縮小と膵のびまん性腫大の改善が認められた。以上より、国際コンセンサス診断基準において自己免疫性膵炎確診例と診断した。【結語】膵腫瘤において、手術が予定されている場合でも可能な限りEUS-FNAにて組織学的診断をすべきと考えられた。
索引用語 膵頭部腫瘤, EUS-FNA