セッション情報 一般演題

タイトル O-037:

ESD後ひとかき癌と判明した胃隆起性病変の1例

演者 増永 高晴(KKR北陸病院 消化器内科)
共同演者 坂下 俊樹(KKR北陸病院 消化器内科), 篠崎 公秀(KKR北陸病院 消化器内科), 油尾 英未(KKR北陸病院 消化器内科), 湊 宏(金沢医科大学病態診断医学)
抄録 症例は40歳代男性.毎年当院人間ドックにて内視鏡検査をうけていた.1年前の内視鏡検査では異常は指摘されなかった.2013年7月上部消化管内視鏡検査にて,胃体上部前壁の大彎よりに直径約8mmの扁平隆起性病変を認めた.背景粘膜はRAC(regular arrangement of collecting venules)を有する正常胃底腺粘膜(炎症や萎縮の認めない胃底腺粘膜)であった.白色通常観察では,隆起性病変の表面は平滑であり,表面模様や色調は周囲粘膜と類似し,内視鏡的には胃底性ポリープ様所見であった.形状は隆起辺縁に切れ込みを有する不整形の扁平隆起であった.同部位を1検体生検したところ,胃底腺粘膜の表層に腺管の密在や腺管の大小不同や,篩状構造をみとめ高分化腺癌 tub1 group5と診断された.生検9日後の内視鏡観察では,生検痕周辺に隆起性病変は初回とほぼ変わらない形態で残存した.EUSでは深達度mであった.近接困難症例であり,拍動の影響もあり拡大NBI観察による判定は困難であった.同部位に対して生検から30日後にESD施行した.切除標本内に内視鏡観察上隆起性病変に一致する部位に7x6mmの隆起部分をみとめた.切除標本(17x10mm)に対して90枚の連続切片による詳しい検討行ったが,この隆起部位からは悪性像をみとめず,上皮の過形成を認めるのみであった. 以上より,ひとかき癌(=生検にて癌が消失した病変)と判断した.隆起性病変内において,癌を認めた生検部分と生検周辺の非癌部の内視鏡所見は通常観察では酷似しており,違いを特定することできなかった.以上より,隆起性病変を形成する主体は非癌の過形成腺管であり,この一部の腺管が癌化し,この癌化した腺管部が微小であったことより,周囲の非癌過形成腺管との差異を内視鏡的には認識できなかったものと推察された.興味深い症例と思われ報告した.
索引用語 ひとかき癌, ESD