セッション情報 一般演題

タイトル O-042:

結核治療により軽快したと考えられる肝周囲炎の1例

演者 岡藤 啓史(金沢赤十字病院 消化器病センター)
共同演者 山宮 大典(金沢赤十字病院 消化器病センター), 高田 昇(金沢赤十字病院 消化器病センター), 寺崎 修一(金沢赤十字病院 消化器病センター), 岩田 章(金沢赤十字病院 消化器病センター), 木元 達哉(金沢赤十字病院 放射線科), 二上 文夫(金沢赤十字病院 外科), 西村 元一(金沢赤十字病院 外科), 水上 勇治(金沢大学大学院医学系研究科形態機能病理学)
抄録 【症例】40代男性【現病歴】C型慢性肝炎(HCV-RNA 7.0IU/ml,HCV genotype1b)に対し,平成21年12月よりペグインターフェロン+リバビリン併用療法を行いSVRが得られた.しかし、経過中に1型糖尿病を発症し,以降インスリン強化療法を行っていた.平成24年7月中旬より右季肋部痛が出現し,限局性腹膜炎の診断で入院し保存的加療を行ったが,退院後も右季肋部痛は持続していた.退院2週間後に右季肋部痛が増悪したため,当科を再診した.炎症所見は乏しいものの,腹部造影CTで肝被膜の濃染をみとめ肝周囲炎の所見であった。Fitz-Hugh-Curtis症候群の男性例の報告もあることから,腹腔鏡検査を施行した.腹腔鏡所見は,肝被膜と壁側腹膜の間に線維性癒着を認め,さらに壁側腹膜に白色結節が多発し,腹水も認めた.線維性癒着は切離した.腹水の細菌培養検査は陰性で,淋菌,クラミジア,結核菌の各PCR検査もそれぞれ陰性であった.肝周囲線維性組織の病理像は,多数の非乾酪性類上皮肉芽腫を認め多核巨細胞も含まれており,サルコイドーシスが疑われる所見であった.しかし,皮膚や眼にサルコイドーシスの所見は認めず,血清ACEも正常であった.さらにガリウムシンチでも肺野や肺門部に集積はなかったが,胸部CTで両側上肺野優位に多発結節影を認めた.その一方で,ツベルクリン反応は二重結節を呈し強陽性であり,クォンティフェロンも陽性であった.喀痰の抗酸菌塗抹検査はガフキー0号であったが、結核菌PCR検査は陽性であった.以上より,肺結節はサルコイドーシスよりも肺結核によるものを強く疑い,抗結核薬3剤併用療法(リファンピシン,イソニアジド,ストレプトマイシン)を開始した.抗結核薬投与前には右季肋部痛,炎症反応高値を繰り返していたが,抗結核薬投与後には腹痛は消失し,CT上の肝被膜濃染像も消失した。サルコイドーシスの可能性も含めて外来にて経過観察しているが,再発は認めていない.【考察】結核治療にて改善したと考えられる肝周囲炎を経験したが,サルコイドーシスの可能性も否定できないため慎重な経過観察が必要と考えられる.
索引用語 肝周囲炎, 結核