共同演者 |
川浦 健(金沢医科大学 消化器内視鏡学), 濱田 和(金沢医科大学 消化器内視鏡学), 北方 秀一(金沢医科大学 消化器内視鏡学), 岡村 英之(金沢医科大学 氷見市民病院 消化器内科), 浦島 左千夫(金沢医科大学 氷見市民病院 消化器内科), 伊藤 透(金沢医科大学 消化器内視鏡学), 木南 伸一(金沢医科大学 一般消化器外科学), 小坂 健夫(金沢医科大学 一般消化器外科学), 黒瀬 望(金沢医科大学 臨床病理学) |
抄録 |
【症例】67歳の女性。予防医学協会の人間ドックにてHP抗体価異常を指摘され精査目的に上部消化管内視鏡検査施行された。体上部小彎前壁側、胃前庭部後壁に早期胃癌病変IIcをそれぞれに認め、精査、加療目的で当院に紹介となった。腹部に異常所見はなく、採血所見、腹部CT所見では特に特記すべき所見は認めなかった。当科で施行した上部消化管内視鏡検査で、新たに噴門部後壁と体上~中部小彎に新たに2つの早期胃癌病変を認めた。特に噴門部後壁病変は粘膜下層浸潤を強く疑う所見であり、体上部病変は線維化反応が強かったため当院消化器外科へ対診となった。ところが、患者様本人の胃を残したいという強い希望があり胃全摘を回避するため胃前庭部後壁の早期胃癌病変に対して内視鏡的胃粘膜下層切開剥離術(ESD)の打診があった。2013年3月28日に胃前庭部後壁病変に対してESDを施行。病変は一括完全切除でありpT1a(M), 14×9mm, ly0, v0, tub2, pHM0, pVM0であった。その後の経過観察の内視鏡検査にて胃角後壁に新たにもう一病変を発見。噴門側胃切除の範囲外であるため同病変もESDを施行。一括完全切除、pT1a(M), 0.2×0.1mm, ly0, v0, tub1, pHM0, pVM0であった。2013年8月8日に残存する3病変に対して消化器外科にて噴門側胃切除を施行。いずれの病変も完全切除となり、リンパ節にも転移所見は認めなかった。以後、合併症もなく13病日に退院となった。幽門側の胃を残すことが可能であった。現在、経過観察の内視鏡検査を施行しているが再発や新病変が認めていない。【結語】外科手術にESDを併用し治療を行ったという報告は少ない。今回、我々は多発性早期胃癌に対してESDを先行し噴門側胃切除を行い幽門側を温存し得た一例を経験した。しかし、胃を温存するには様々な条件があり、特に内視鏡検査では、各病変の正確な範囲診断や超音波内視鏡検査などを使用した正確な深達度診断、微小な胃癌の発見が重要と考えられた。また、同症例は今後も異時性多発早期胃癌の発見も重要であり、これまで以上に綿密な経過観察が必要と考える。 |