セッション情報 | 一般演題(専修医(卒後3-5年)) |
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タイトル | O-048:NSAIDs投与により大腸に多発性潰瘍を来した1例 |
演者 | 明石 桃子(富山大学 内科学 第三講座) |
共同演者 | 安藤 孝将(富山大学 内科学 第三講座), 吉田 啓紀(富山大学 内科学 第三講座), 南條 宗八(富山大学 内科学 第三講座), 植田 亮(富山大学 内科学 第三講座), 金 辰彦(富山大学 内科学 第三講座), 三原 弘(富山大学 内科学 第三講座), 藤浪 斗(富山大学 内科学 第三講座), 梶浦 新也(富山大学 内科学 第三講座), 西川 潤(富山大学 内科学 第三講座), 細川 歩(富山大学 内科学 第三講座), 杉山 敏郎(富山大学 内科学 第三講座) |
抄録 | 【はじめに】NSAIDsによる大腸潰瘍の発生頻度は約3%と報告されている。今回、NSAIDs投与中に大腸に多発性の潰瘍形成を来し、重篤な病態を呈した1例を報告する。【症例】83歳、女性。【現病歴】2013年2月より骨粗鬆症と逆流性食道炎のため近医でメロキシカムとランソプラゾールを処方されていた。2013年3月下旬より下痢と腹痛が出現したため、S状結腸内視鏡が施行されたが、びらんを認めるのみであった。急性腸炎と診断され、メロキシカムを中止のうえ、抗生剤と整腸剤による加療を受けていたが、3日後には下血を認め、出血性ショックに至ったため、当院に転院となった。【入院後経過】搬送時、血圧137/64mmHg、脈拍50/分、体温36.6℃であり、血液検査所見でWBC 6350/μl、CRP 13.3mg/dlと炎症反応の上昇を認めた。同日行われた腹部CT検査では、横隔膜ヘルニアのため胃と横行結腸の一部が胸腔内に逸脱していたものの、小腸及び大腸の浮腫は軽度であった。また、下部消化管内視鏡検査を施行したところ、盲腸からS状結腸の全域に境界明瞭な潰瘍が多発しており、一部では癒合し、ヘルニア嚢内では縦走傾向を認めた。大腸多発潰瘍の原因として、NSAIDs以外の原因を検索するため、便培養と血液培養を複数回施行したが、特異的な所見はなく、血清抗体価及びCMV antigenemiaは陰性で、CMV感染も認められなかった。また、大腸多発潰瘍からの生検では、封入体や虫体、肉芽腫などの所見を認めず、血管炎も否定的であった。入院後、左方移動を伴う白血球上昇が持続していたため抗生剤投与を継続し、補液による循環動態の管理を行ったところ、炎症反応は速やかに改善した。食事再開後も下痢や下血の症状の出現はなく、小腸病変の検索のため施行したカプセル内視鏡検査では、小腸内に輪状の瘢痕狭窄が多発していた。約1ヶ月後の下部消化管内視鏡検査で、多発潰瘍は全て治癒していた。【考案】本症例はNSAIDs投与により大腸の広範囲に多発潰瘍を形成し、2次的にbacterial translocationが起こり白血球増多を伴う発熱を来したと判断された。 |
索引用語 | NSAIDs, 潰瘍 |