セッション情報 一般演題

タイトル O-051:

保存的加療により改善した特発性上腸間膜静脈血栓症の1例

演者 山田 和俊(小松ソフィア病院)
共同演者 亀田 正二(小松ソフィア病院), 加登 康洋(小松ソフィア病院)
抄録 【症例】40歳代男性【既往歴】特記事項なし【嗜好歴】機会飲酒,喫煙20本/日【現病歴】2013年6月末ごろより下痢と軽度の腹痛認めていたが,7月中旬に腹痛の増悪を認め,当院へ紹介となった.血液検査所見ではWBC 8400/μl, CRP 6.55 mg/dl, と炎症反応の増加を認めたが,他に特記所見はなく,下腹部に圧痛を認めたものの腹膜刺激症状は認めなかった.腹部造影CTでは門脈から上腸間膜静脈にかけて広範囲に連続する血栓を認め,上腸間膜静脈血栓症と診断した.腸管の浮腫や腹水などは認めず,血液検査所見からも腸管壊死には至っていないと判断し,腹部症状を慎重に経過観察しつつ,ダナパロイドナトリウムによる血栓溶解療法(5000単位/day)を行った.同時に血栓素因の検索を行ったが,アンチトロンビン活性,プロテインC, プロテインSに異常はなく,抗カルジオリピン抗体など自己抗体も陰性であった.【経過】治療開始後も腹痛の増悪はなく,炎症反応も徐々に改善を認めた.14日間のダナパロイドナトリウム投与にて血栓はほぼ溶解したため,その後はワーファリンによる維持療法に移行した.以後外来にてフォローアップを行っているが,腹部症状や血栓の再発などは認めていない.【考察】上腸間膜静脈血栓症は腸管壊死など来して緊急手術を要する例も多く,死亡率も13~50%と報告されている.一方で特異的な症状を示さないことからしばしば診断に難渋することも多い.今回比較的早期に診断し,保存的に加療し得た症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
索引用語 血栓症, 門脈圧亢進症