セッション情報 一般演題

タイトル O-052:

保存的加療により治癒し得た膵嚢胞内出血からの腹腔内穿破の一例

演者 田中 章浩(公立松任石川中央病院 消化器内科)
共同演者 友影 美貴(公立松任石川中央病院 消化器内科), 高畠 央(公立松任石川中央病院 消化器内科), 浅井 純(公立松任石川中央病院 消化器内科), 卜部 健(公立松任石川中央病院 消化器内科)
抄録 症例は59歳、男性。主訴は心窩部痛。元来高血圧、仮面うつ病にて近医通院中であった。平成25年5月下旬に心窩部痛が出現したが、経過観察にて自然寛解が得られた。同年6月11日 午前0時頃から心窩部痛が再度出現し、鎮痛剤により一旦軽快が得られたが、症状はすぐに再燃し近医を受診された。近医にて嘔吐と血圧の低下も認められたため、急性腹症にて当院紹介受診となった。受診時腹部CTにて腹腔内血腫が疑われ、同日に精査加療目的のため緊急入院とした。腹部超音波検査では、上腹部正中に不均一な低エコー域が認められ、それに連続して膵体部に位置する中心に高エコー域を持つ40mm大の低エコー腫瘤が指摘され、膵嚢胞内出血および腹腔内穿破が疑われた。MRIでも同様の所見が得られた。また採血にて、膵型アミラーゼ、リパーゼの上昇が見られ、急性膵炎と診断した。腹腔内血腫は同日の経過にて増大傾向は見られず、入院後は急性膵炎に対する保存的加療を開始した。また急性膵炎の原因としては、飲酒歴はなく、胆石、高TG血症も否定的であった。MRCPでは膵管に異常は見られず、EUSでも膵体部嚢胞、嚢胞内の血餅を指摘されるのみであった。また血管造影では仮性動脈瘤等の所見は認められなかったが、血管外漏出、血腫の染まりを疑う所見を指摘された。保存的加療により腹痛は改善傾向であったが症状は残存していたため、第14病日に再検CTを施行したところ、腹腔内血腫は増大しているものの全体的に低吸収化、また膵嚢胞は縮小し、嚢胞内も低吸収化しており、全体に陳旧性血腫になっているものと判断した。保存的加療のみで止血が得られ、膵炎も軽快したことから、第20病日に退院とした。膵仮性嚢胞は約30%に膿瘍、穿孔、出血等の合併症を生じ、出血はその中の約10%を占めるが、重篤であり死亡率は25-40%と合併症の中で最も高い。腹腔内出血を来す症例は更に稀であり、致死率も50-60%と報告されている。本例のように保存的加療のみで治癒し得た報告は稀であり、若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 膵嚢胞内出血, 腹腔内出血