セッション情報 一般演題

タイトル O-054:

成人型Hirschsprung病の一例

演者 舩木 雅也(石川県済生会金沢病院 消化器科)
共同演者 代田 幸博(石川県済生会金沢病院 消化器科), 松田 昌悟(石川県済生会金沢病院 消化器科), 若林 時夫(石川県済生会金沢病院 消化器科)
抄録 【症例】50歳代男性、バセドウ病眼症にて当院通院中であった。幼児期より高度の便秘を認め、浣腸や緩下剤を使用していた。20歳代に腹痛を認めて、近医を受診したところ、巨大結腸症を指摘されたが放置していた。その後も1ヶ月に1回ほど下腹部痛を認めては数日で改善することを繰り返していた。今回、過去に経験のない高度の下腹部痛を認めたため当院救急外来を受診した。血液検査所見では特記すべき異常を認めず、腹部CT検査では拡張したS状結腸に大量の便の貯留を認めた。浣腸を施行し、排便とともに症状の改善を認めたため経過観察とした。しかし、3日後発熱、腹痛の増悪にて再度当科を受診した。血液検査で白血球18300/μL、CRP16.5mg/dlと高度の炎症反応を認め、腹部CT検査は便の貯留は改善しているものの、S状結腸の壁肥厚と周囲脂肪織濃度の上昇を認めた。下部消化管内視鏡検査ではS状結腸の拡張に加え、拡張部に限局する白苔を伴う全周性の潰瘍を認めたため入院した。絶食、抗生剤投与による保存的加療を行ったところ症状は改善した。注腸造影検査を行ったところ、S状結腸の拡張に加え相対的に直腸の拡張不良を認めたことからHirschsprung病を疑い、S上結腸の炎症はそれに伴う閉塞性腸炎と考えた。診断確定のため金沢医科大学小児外科に紹介した。同院での肛門内圧検査では、肛門管静止圧は46mmHgと異常を認めなかったが、直腸肛門反射の消失を認めた。また、直腸粘膜吸引生検を施行したところ、アセチルコリンエステラーゼ染色にて粘膜固有層から粘膜下層にかけて同染色陽性の神経線維の増生を強く認めたことから成人型Hirschsprung病と診断した。人工肛門を造設し、6ヶ月後根治術の予定である。【考察】Hirschsprung病は新生児、乳幼児期から、腹部膨満、便秘、嘔吐などで発見される代表的な小児消化管疾患である。しかし、short segment typeのHirschsprung病は慢性便秘症の診断のもとに下剤、浣腸の実施、肛門部刺激などによって症状の改善を認め診断に至らず、成人になって発見されることがある。診断までの経過や画像所見等示唆に富む症例と考え報告する。
索引用語 ヒルシュスプルング病, 診断