セッション情報 シンポジウム1「消化管疾患の診断と治療の最前線」

タイトル S1-007:

便潜血と糞便RNAアッセイの組み合わせによる大腸がんスクリーニングの有用性

演者 栗山 茂(医科)
共同演者 杉本 健(医科), 金岡 繁(医科)
抄録 【目的】我々は糞便中のCOX-2 mRNA(COX-2)やmicroRNA発現を指標にした大腸がん診断法を開発しその有用性を報告してきた。今回、大腸がん患者における糞便中COX-2及びmiR-21、miR-92aの発現と免疫学的便潜血検査(FOBT)を組み合わせた糞便アッセイの大腸がん診断能を検討した。【方法】内視鏡的・病理的に診断された進行腺腫26例、がん138例(病期は0期: I期: II期: III期: IV期=15: 31: 46: 32:14)と対照群126例を対象とした。糞便0.5gからRNAを抽出しTaqMan assayを用いてCOX-2、miR-21、miR-92aのqRT-PCRを行った。また同一便でFOBT1回法を行った。【結果】糞便中のCOX-2とmiR-21とmiR-92aの発現は対照群に比べ腫瘍群で有意に高かった。カットオフ値を対照群全体の97.5 percentileに設定すると、大腸がんの感度/特異度は、COX-2は71.0%/96.8%、miR-21は41.3%/96.8%、miR-92aは44.9%/97.6%、FOBTは66.7%/98.4%であった。FOBTとCOX-2を組み合わせると大腸がんの感度は各々81.9%で、更にmiR-21を組み合わせた3マーカーでは86.2%、更にmiR-92aを組み合わせた4マーカーでは87.0%となり、それぞれ感度はFOBT単独に比べて有意に高かった(P=0.006、P<0.001、P<0.001)。また腺腫/0期/I期の早期の腫瘍に限定すると、その感度はFOBTが33.3%に対しFOBTとCOX-2の組み合わせは各54.2%、更にmiR-21の組み合わせた3マーカーでは70.8%で、更にmiR-92aの組み合わせた4マーカーでは75.0%で、それぞれFOBT単独に比べて有意に高かった(P=0.02、P<0.001、P<0.001)。【結論】大腸がん全体では糞便中のCOX-2はFOBTとほぼ同等の感度であり、またCOX-2とFOBTとの組み合わせによりFOBT陰性のがん症例を拾い上げ、感度の上昇が得られた。miR-21やmiR-92aは大腸がん全体の感度はCOX-2やFOBTと比べ有意に低いが、COX-2とFOBT陰性の症例で特に進行腺腫や早期のがんの拾い上げに有効であった。FOBTと糞便RNAの併用は大腸がんスクリーニングに有用であると考えられた。
索引用語 大腸がん, RNA