セッション情報 シンポジウム1「消化管疾患の診断と治療の最前線」

タイトル S1-014:

バーチャル小腸内視鏡

演者 吉川 俊之(静岡県立総合病院 消化器内科)
共同演者 鈴木 直之(静岡県立総合病院 消化器内科), 菊山 正隆(静岡県立総合病院 消化器内科)
抄録 【目的】全小腸をバルーン内視鏡により観察することは容易でない。狭窄が疑われるケースではカプセル内視鏡は禁忌となる。小腸病変の位置を客観的に示すことはしばしば困難である。我々はこれらの問題を解決する目的で、CTにより小腸を立体的に描出する、バーチャル小腸内視鏡(VE)を開発し、小腸病変の検索に積極的に活用している。現在我々の施設で行われているVEのプロトコールを示し、臨床上の有用性について述べる。【方法】2006年11月から2013年2月の間に、87人の患者に対し、90件のVEを行った。経鼻経管的に小腸に空気を注入し、64列マルチスライスCTで撮像後、バーチャル大腸内視鏡用プログラムにより画像を再構築した。全小腸描出率を向上させる目的で、送気チューブ、送気装置、プロトコールを適宜改良した。これらのうち33件で、検査中の小腸の内圧と送気量をモニタリングし、描出された小腸の長さ、全小腸描出率を求めた。VEにより描出された異常所見を、可能な限り他の画像所見、術中所見、組織所見と対比した。【成績】VEの施行理由の内訳は、炎症性腸疾患(36件)、小腸閉塞(32件)、小腸腫瘍(15件)、OGIB(4件)、メッケル憩室(1件)、その他(2件)であった。上述した33件のうち7件は、小腸切除の既往があったため、解析より除外した。送気量、最大腸管内圧、描出された小腸の長さと全小腸描出率はそれぞれ、2016 ± 728 ml、2.69 ± 0.81 kPa、480.6 ± 85.5 cmと84.6%であった。VEにより、狭窄(クローン病、非特異性多発性小腸潰瘍症、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、転移性小腸癌)、隆起性病変(ポリープ、粘膜下腫瘍)、メッケル憩室などが描出できた。病変をバーチャル展開像上にプロットすることにより、小腸マップを作成することができた。【結論】VEは、比較的容易に全小腸を描出することができる。狭窄を有する症例に対しても安全に施行することができる。病変の位置を客観的に表示することができる。バーチャル小腸内視鏡は小腸疾患診断において有用と考える。
索引用語 全小腸描出率, 小腸マップ