セッション情報 一般演題

タイトル O-063:

十二指腸・胆管・膵浸潤により閉塞性黄疸をきたした胃癌の1例

演者 側島 友(愛知県がんセンター愛知病院)
共同演者 藤田 孝義(愛知県がんセンター愛知病院), 近藤 真也(愛知県がんセンター愛知病院), 都築 佳枝(愛知県がんセンター愛知病院), 榊原 真肇(愛知県がんセンター愛知病院)
抄録 【はじめに】進行胃癌において閉塞性黄疸を呈することがあるが、その多くは術後再発の形で発症し、胆管狭窄の原因は肝十二指腸間膜リンパ節転移によることが多い。今回我々は、腫瘍の直接浸潤による閉塞性黄疸が初発症状となった胃癌の症例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
【症例】58歳男性。黄疸を自覚して近医を受診し、当院へ紹介された。初診時のT-Bilは23.3mg/dLと高値であった。腹部CTでは、膵頭部に低吸収な腫瘤像を認め、胆管・膵管の拡張を伴っていた。また胃体下部・前庭部から十二指腸球部・下行脚にかけて連続する壁肥厚を認めた。膵癌による閉塞性黄疸および胃癌を疑い、内視鏡的胆管ドレナージを試みた。十二指腸球部から下行脚にかけて多発する発赤調の隆起性病変が非連続性にみられ、介在粘膜は浮腫状であった。また主乳頭は腫大していた。胆管へのカニュレーションができず、経皮経肝的胆管ドレナージにて減黄をはかった。上部消化管内視鏡検査では、体下部大弯にひだの腫大があり一部粘膜下腫瘍様に隆起していた。同部位の生検病理診断では中分化型腺癌(tub2)の結果が得られ、4型の胃癌と診断した。一方、十二指腸球部・下行脚および主乳頭周囲の隆起性病変・浮腫状粘膜の生検では、胃生検と組織学的に類似した中分化型腺癌を認め、表層には随所で非腫瘍性の上皮が被覆している所見が得られた。上部消化管内視鏡では、前庭部から幽門にかけては粘膜面に異常を認めず、体下部の胃癌と十二指腸の腫瘍とは連続性がないものの、CT上は前庭部から十二指腸へ連続した壁肥厚を認めること、および病理結果から、胃癌の十二指腸・胆管・膵浸潤によって閉塞性黄疸をきたしたと考えた。HER2陽性であったため、減黄の後にカペシタビン・シスプラチン・トラスツズマブの3剤併用化学療法を開始した。
【考察】胃癌に閉塞性黄疸を併発した場合、直接浸潤によって胆管狭窄をきたしている可能性も念頭に置く必要がある。本症例は、体下部に発生した胃癌が十二指腸・胆管・膵へ浸潤したことで閉塞性黄疸をきたした比較的まれな一例と考えられた。
索引用語 胃癌, 十二指腸浸潤