セッション情報 一般演題

タイトル O-045:

食道裂孔ヘルニアに伴った胃軸捻症の一例

演者 水谷 泰之(公立学校共済組合 東海中央病院 消化器内視鏡センター)
共同演者 大塚 裕之(公立学校共済組合 東海中央病院 消化器内視鏡センター), 藤塚 宣功(公立学校共済組合 東海中央病院 消化器内視鏡センター), 石川 英樹(公立学校共済組合 東海中央病院 消化器内視鏡センター)
抄録 緒言;胃軸捻転症は整理的範囲を超えて回転し通過障害をきたす比較的まれな疾患である。軽症例では胃管留置のみで改善が見られるが、高度の軸捻転を生じた症例では胃穿孔や粘膜出血をきたし緊急手術を要することもあるため、発症早期の診断と適切な治療が求められる。症例;74歳、女性。主訴;頻回嘔吐、黒色吐物。現病歴;2013年1月上旬、咳き上げをしてから頻回に嘔吐が見られるようになった。吐物が黒色であったため近医受診し、当院に紹介受診された。既往;子宮癌(子宮全摘術施行)、高血圧、脂質異常症、糖尿病。来院時現症;上腹部の膨満が著明であり,右季肋部に圧痛を認めたが、筋性防御は認めなかった。血液生化学検査;Cre 1.15 mg/dl、BUN 59.3mg/dl、K 3.2mEq/dlと嘔吐による脱水・電解質異常が見られた。腹部X線検査;1年前の腹部X線検査は正常範囲内であったが、左胸腔内に心陰影に重なる球状の陰影を認め,気管・心陰影は右方に偏位していた。胸腹部CT検査;食道裂孔をヘルニア門として胃が左胸腔内に嵌入,胸腔内で胃は拡張し大動脈を背側に圧排していた。腹腔内でも胃は著明に拡張していたが,十二指腸以降の腸管拡張は認められなかった。CT画像から長軸性の胃軸捻転症と診断した。造影CTで胃壁はよく造影されていた。腹部所見・画像所見から腸管虚血は否定的であり、保存的にみることとした。経鼻胃管挿入したところ1Lほど排液を認めた。腹部膨満が改善したため第1病日に上部内視鏡検査、ガストロUGI施行したが通過障害を認めなかった。第2病日から食事摂取しても再発を認めないため第9病日に退院となった。考察;胃軸捻転症は胃管挿入による減圧が第一選択である。横隔膜へルニアに伴う胃軸捻転の場合,急激に発症し緊急手術が施行されることもあるが、近年では内視鏡的な軸捻転の整復も試みられている。再発予防のために胃固定術やヘルニア門の縫縮,噴門形成術が選択される。今回われわれは経鼻胃管の留置による減圧のみで軽快した胃軸捻転症の1例を経験したため、若干の文献的な考察を加えて報告する。
索引用語 胃軸捻転, 食道裂孔ヘルニア