セッション情報 一般演題

タイトル O-127:

腹部手術歴のある胸部食道癌再建法の工夫

演者 鳥居 康二(名古屋大学 大学院 医学系研究科 消化器外科学)
共同演者 小池 聖彦(名古屋大学 大学院 医学系研究科 消化器外科学), 神田 光郎(名古屋大学 大学院 医学系研究科 消化器外科学), 小林 大介(名古屋大学 大学院 医学系研究科 消化器外科学), 田中 千恵(名古屋大学 大学院 医学系研究科 消化器外科学), 山田 豪(名古屋大学 大学院 医学系研究科 消化器外科学), 中山 吾郎(名古屋大学 大学院 医学系研究科 消化器外科学), 藤井 努(名古屋大学 大学院 医学系研究科 消化器外科学), 杉本 博行(名古屋大学 大学院 医学系研究科 消化器外科学), 野本 周嗣(名古屋大学 大学院 医学系研究科 消化器外科学), 藤原 道隆(名古屋大学 大学院 医学系研究科 消化器外科学), 小寺 泰弘(名古屋大学 大学院 医学系研究科 消化器外科学)
抄録 【諸言】遊離空腸による食道再建は喉頭合併切除を伴う頚部食道切除後では一般的であるが,これを応用し内胸動静脈と血行再建することで胸骨切痕から剣状突起までの範囲を間置可能である.また,胸部食道癌においては胃管,結腸,小腸を用いた定型的な再建が存在するが,何らかの理由により再建臓器として使えない症例も存在する.その際遊離空腸が採取できれば,それを用いた再建法が可能である.今回我々は腹部手術歴があり胃,結腸による再建が不可能な胸部食道癌において,遊離空腸による再建を行いえた症例を経験したので報告する.【症例】70代女性.既往として15年前膀胱癌で膀胱全摘,右半結腸を代用膀胱に使用.術後に骨盤内放射線照射歴あり.他院で食道癌と診断され化学放射線療法後当院紹介.紹介時AeGLt, cT3, N0, M0, cStageIIであった.Mtのdysplasiaも含めて右開胸中下部食道切除,噴門側胃切除,有茎空腸間置を予定した.開腹すると空腸が骨盤底に強固に癒着しており,有茎空腸再建は不可能な状態であった.また結腸は手術の既往あり結腸再建は困難であるため遊離空腸再建を行うこととした.上縦隔郭清が不要かつ経裂孔的に下縦隔郭清を行えること,また侵襲を少なくする目的から非開胸食道抜去,噴門側胃切除,胸壁前遊離空腸再建を行った.【手術手技】胸壁正中切開で両側乳頭まで皮弁形成を行った.空腸動静脈第2枝を中心に約20cm空腸を切離・挙上した. 血管吻合に先んじて口側の空腸は胸骨切痕の高さで食道と器械吻合し,その後吻合血管への緊張が最も少ない形で第3肋骨の高さで内胸動静脈と空腸動静脈を顕微鏡下に吻合した.最後に腸間膜の形態に沿って腸管を配置し,腸管を極力直線状に保ち,空腸肛門側と胃体部を吻合した.腸瘻,減圧チューブは遊離空腸から留置した.術後2日目から経腸栄養,14日目から経口摂取を開始した.【まとめ】 遊離空腸を用いた再建は血行再建を伴うので他の術式に比べて煩雑になるが,腹部手術歴があり胃,結腸,有茎小腸が再建に使えない症例での1選択肢として有用であると考えられる.
索引用語 食道癌, 遊離空腸