セッション情報 シンポジウム1「消化管疾患の診断と治療の最前線」

タイトル S1-011:

当院における大腸ESDの現状とスネア併用Hybrid ESDの有用性

演者 山村 健史(名古屋大学大学院医学研究科 消化器内科学)
共同演者 大宮 直木(名古屋大学大学院医学研究科 消化器内科学), 後藤 秀実(名古屋大学大学院医学研究科 消化器内科学)
抄録 【目的】大腸ESDは2012年4月より保険収載され、各施設で施行可能となった。しかし手技難易度が高く、合併症のリスクも高いことが問題となっている。当院では処置困難な場合は途中でスネア切除を併用するHybrid ESD(HE)へ移行することがあるが、分割切除になってしまう症例が発生する。今回当院における大腸ESDの現状とHEの有用性について検討した。【方法】対象は当院で2006年9月から2013年2月までに大腸ESDを試みた腺腫もしくは癌151症例155病変(腺癌115例・腺腫40例)とし、ESD完遂例とHE移行例に分け完全一括切除率、一括切除率、平均腫瘍径、合併症、局所再発率などについて検討した。【結果】大腸ESDを試みた155病変の内ESD完遂例は89例(57.4%)、HEへ移行したのは61例(39.4%)あり、5例で切除不能(3.2%)であった。全体の治療成績は、一括切除率135例(82.3%)、完全一括切除率101例(61.6%)、平均腫瘍長径39.75±18.8mm、穿孔率15例(9.7%)、後出血率7例(4.5%)で、半年以上観察可能であった98例の局所再発率は3例(3.1%)であった。穿孔した14例で保存的に経過観察しえたが、1例で緊急手術を要した。穿孔例のうち11例(73.3%)は術者のESD経験が20例以下の場合であった。遺残した2例はESD完遂した5cm以上の隆起型腫瘍で完全一括切除と判断していた。遺残病変は追加内視鏡治療で切除できた。残り1例はHEを施行し2分割切除となった平坦隆起型病変であり、患者希望もあり追加手術となった。ESD完遂群とHE群の比較では一括切除率(%)100/60.7、完全一括切除率(%)74.2/45.9、平均腫瘍長径36.9±15.9/28.7±19.9mm、穿孔率(%)7.9/13.1(但しスネア切除で穿孔したのは3.3%)、後出血率(%)4.5/4.9、局所再発率(%)3.8/2.3、肉眼型は隆起型(例)9/2・側方進展腫瘍(LST)-G52/26・LST-NG26/29・陥凹型2/4であった。HEの52例(85.2%)は術者のESD経験が20例以下の場合であった。【結語】穿孔や手技困難によるスネアの併用は経験の浅い術者で起こり易い。HEはESD完遂に比し一括切除・完全一括切除率は低下するが、局所再発率や合併症には大差なく、手技困難時には有用な手技と思われた。
索引用語 大腸ESD, 成績