セッション情報 |
シンポジウム2「肝胆膵疾患の診断と治療の最前線」
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タイトル |
S2-007:当科における難治性腹水に対するCARTの有効性
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演者 |
松下 直哉(JA静岡厚生連 遠州病院) |
共同演者 |
白井 直人(JA静岡厚生連 遠州病院), 西野 眞史(JA静岡厚生連 遠州病院), 高垣 航輔(JA静岡厚生連 遠州病院), 竹内 靖雄(JA静岡厚生連 遠州病院), 梶村 昌良(JA静岡厚生連 遠州病院) |
抄録 |
【背景】CART(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)とは腹水症(胸水症を含む)患者の腹水(又は胸水)採取し、それを濾過、濃縮し患者に再静注する治療法である。当科では難治性腹水症患者に対して、2009年7月よりCARTを導入し、2013年3月現在で32症例に施行した。内2症例を提示する。【症例1】膵尾部癌、門脈浸潤、多発肝転移の一例。化学療法導入目的で入院。GEM(1800mg/day)を開始し、3クール目の効果判定CTではSDと判断。腫瘍マーカーも改善傾向であったため、GEM継続の方針となったが、4クール目施行前に腹水貯留とAlb低下を認めた。腹水穿刺での細胞診は陰性であり、門脈本幹閉塞による腹水貯留を疑った。その後利尿剤でも腹水コントロール困難であったため、同月よりCARTを導入し計11回施行。併せてGEMも継続したが、CART導入3ヶ月目頃から癌性疼痛が出現し緩和医療へ移行。その後急速に肝腎不全が進行し永眠。【症例2】膵頭部癌の一例。GEM(1200mg/body)を開始したが、2回目投与時に薬疹出現あり中止、TS-1(80mg/body)へ変更するもCA19-9上昇を認めPDと判断。3rd lineとしてDTXを試みたが、開始2ヶ月後に疼痛の増強があり中止、疼痛緩和目的で放射線照射を施行。以後は緩和医療へ移行し、診断後16ヶ月目頃には腹水貯留も認めたため、CART導入。疼痛コントロールを行いながら、4ヶ月の間で計17回施行したが、CART導入後5ヶ月後に全身の衰弱が進行し永眠。【成績】平均年齢は70.7歳、男女比は1:1であった。32例中、胃癌11例、膵臓癌8例、胆管癌4例、肝細胞癌3例、C型肝硬変3例、NBNC肝硬変1例、胆嚢癌1例、大腸癌1例であった。また32例(計110回施行)中、ショック、肝性脳症、消化管出血などの重篤な副作用はみられず、3症例で発熱を認めたのみであった。血中アルブミン濃度は4症例を除き、CART導入から最終回までの期間、維持可能(1g/dl以上の低下なし)であった。【結論】CARTは患者への侵襲も少なく比較的安全な方法であり、低Alb血症と自覚症状(腹満感)の改善に効果的であると考えられる。 |
索引用語 |
CART, 難治性腹水 |