セッション情報 ワークショップ14(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

患者にやさしい上部消化管内視鏡検査の工夫

タイトル 内W14-10:

上部消化管内視鏡検査の呼吸・循環動態に及ぼす影響と対策:高齢者と若年者の比較も含めて

演者 太田 和寛(大阪医大・2内科)
共同演者 梅垣 英次(大阪医大・2内科), 原田 智(大阪医大・2内科)
抄録 【目的】内視鏡医は被検者の高齢化により予期せぬ偶発症・合併症を経験している。今回、我々は上部消化管内視鏡検査時に心負荷に対して鋭敏に反応するナトリウム利尿ペプチドファミリーであるhANP(心房負荷)およびhBNP(心室負荷)を測定し、内視鏡検査の呼吸・循環器系に及ぼす影響、偶発症発生の要因、対応予防などについて高齢者と若年者とを比較検討した。【対象】65歳以上の高齢者(E)群40例と65歳未満の若年者(Y)群20例を対象とし、内視鏡検査前後で血中hANP、hBNP、血圧、脈拍、SaO2を測定した。さらに、内視鏡検査時の抗コリン剤、グルカゴン製剤、鎮静剤使用の有無および循環器疾患合併の呼吸・循環器系に及ぼす影響についても検討した。【成績】(1)Y群では検査前後ですべての検討項目に有意差を認めなかった。(2)E群においては、hANPは循環器疾患の合併の有無にかかわらず検査後に有意(p<0.01)に増加した。さらに循環器疾患を合併したE群ではhBNP値の有意な上昇(p<0.05)もみられた。(3) 鎮痙剤である抗コリン剤とグルカゴンの心循環器系に及ぼす影響の違いを検討すると、E群では抗コリン剤を用いることにより、グルカゴンと比較して有意(p<0.05)にhANP値を上昇させた。(4)E群で抗コリン剤を使用し鎮静剤を使用しなかった群では検査後にhANP値の有意な増加(p<0.005)を認めたが、抗コリン剤・鎮静剤を共に使用した群ではhANP値の変動に有意差はみられなかった。【結論】高齢者内視鏡検査時には心房負荷が示唆され、特に循環器疾患を合併している高齢者ほど検査による負荷が大きかった。さらに抗コリン剤の使用により心房負荷は増大したが、鎮静剤を併用したりグルカゴン製剤を投与することにより心房負荷は軽減された。以上の点を踏まえて、高齢者内視鏡検査においては内視鏡検査に関係した偶発症のハイリスクグループを念頭においた検査前の問診、適切な前処置薬の選択、心肺モニタリングによる偶発症発生の早期発見と適切な対応、その環境整備が重要であると考えられた。
索引用語 上部消化管内視鏡検査, 呼吸・循環動態