セッション情報 一般演題

タイトル O-098:

膵炎を伴った胃異所性膵の1切除例

演者 栗本 拓也(名古屋共立病院 消化器化学療法科)
共同演者 石垣 智之(名古屋共立病院 消化器内科), 寺下 幸夫(名古屋共立病院 外科)
抄録 【症例】45歳、女性
【既往歴】子宮筋腫、高血圧症
【現病歴】約7年前から原因不明の上腹部痛が間欠的に出現していた。通常内視鏡で粘膜下腫瘍を疑う、軟らかく立ち上がりがなだらかな隆起性病変を認めたが、CTや超音波内視鏡の所見から胃粘膜下嚢胞と診断され経過観察されていた。その後も腹痛は散発的に出現したが、病変の内視鏡所見に大きな変化は見られなかった。
【経過】定期的な内視鏡で病変の緊満感増強を確認したため、改めて超音波内視鏡を実施した。粘膜下を主座とする病変は約4cm大で大部分は低~等エコーを呈し、一部に嚢胞部分や石灰化を疑う点状高エコー構造を複数認めた。次いで行った穿刺生検で、病理組織学的に膵腺房細胞を確認した。有症状で血清CEAが軽度高値、CTで病変内部の不均一な造影効果や胃周囲リンパ節の腫大を認めるなど、癌化の可能性が否定できなかったため胃切除術を実施した。切除標本の病理検査では、腫大したリンパ節を含めて悪性像は認めず、Heinlich II型の胃異所性膵と診断した。また硝子様滲出物や膵石を伴う慢性的な膵炎の所見を認め、長期間にわたる腹痛の原因と推測した。
【考察】異所性膵ではサイズが小さくても癌化した症例が複数報告されており、本症例では癌化を懸念するいくつかの所見も認めたため手術を実施した。ただ現時点では胃異所性膵における絶対的な手術基準はなく、過剰な外科侵襲を避けるためにも手術が推奨される高リスク群を囲い込むための評価方法を確立することが必要と思われる。
索引用語 異所性膵, EUS-FNA