セッション情報 シンポジウム1「消化管疾患の診断と治療の最前線」

タイトル S1-001:

H. pylori感染診断における抗H. pylori -IgG抗体法偽陰性の検討

演者 市川 仁美(浜松医科大学 第一内科)
共同演者 杉本 光繁(浜松医科大学 第一内科), 古田 隆久(浜松医科大学 臨床研究管理センター)
抄録 【目的】H. pylori (Hp)感染は胃癌の重要なリスクファクターであり,正確なHp感染診断が重要である.感染診断法として抗Hp-IgG抗体法(抗体法)が頻用されるが,抗体法には偽陰性例が存在する.今回,抗体法での偽陰性例について萎縮性胃炎の指標として用いられる血清ペプシノゲン(PG)値との関係を検討した.【方法】当院ピロリ菌胃癌リスク検診外来の受診者のうち,上部内視鏡検査施行時に胃液PCR法,迅速ウレアーゼ法(RUT)および組織培養法の検体が採取され,さらに血清PG値,抗Hp-IgG抗体価の測定が行われた290名を対象とした.抗Hp -IgG抗体価が10U/ml未満を抗体法陰性とし,PCR法あるいはRUTあるいは組織培養法が陽性であった例をHp陽性とした.PCR法陽性のうち,その他検査法で陰性で,内視鏡的に胃粘膜萎縮がないものはPCR法偽陽性例として除外した.【結果】290例中9例はPCR法偽陽性として除外した.残り281例のうち10例はHp陰性かつ抗体法陰性(Hp-/IgG-群),240例はHp陽性かつ抗体法陽性(Hp+/IgG+群),26例がHp陽性かつ抗体法陰性(Hp+/IgG-群)で抗体法偽陰性例と考えられた.5例はHp陰性かつ抗体法陽性(Hp-/IgG+群)で抗体法偽陽性例と考えられた.各群のPGl/PGll比は4.99,2.59,3.01,5.98であった.抗体法偽陰性群(Hp+/IgG-群)のPGl/PGll比は,Hp-/IgG-群,Hp-/IgG+群と比較して有意に低下しており(p=0.0275,p=0.0263),Hp+/IgG+群と同様に萎縮が進行した胃癌の高リスク群と考えられた.また,抗体法偽陰性26例のうち,15例がPGl/PGll比<3.0であり,血清PG値測定でのHp感染の拾い上げが可能であった.RUTでは16例、PCR法では24例が拾い上げ可能であった。【結語】抗体法はHp感染診断において簡便で有用な検査法であるが,偽陰性の場合には胃癌リスクが高い可能性があり,他検査とも組み合わせた総合的な判断が必要と考えられた.また,PCR法は偽陽性に注意が必要であるが、PCR法の併用は抗体法偽陰性例の拾い上げに有用と考えられた.
索引用語 H. pylori (Hp)感染診断, 抗Hp-IgG抗体法