セッション情報 一般演題

タイトル O-004:

頻回の低血糖と非閉塞性黄疸を発症した巨大多発性肝転移を有するPS3の切除不能進行大腸癌に化学療法を施行し、著効が得られ、全身状態の改善と延命効果が見られた1例

演者 吉田 正樹(東濃厚生病院 内科)
共同演者 野村 翔子(東濃厚生病院 内科), 荒川 直之(東濃厚生病院 内科), 長屋 寿彦(東濃厚生病院 内科), 藤本 正夫(東濃厚生病院 内科), 宮本 陽一(東濃厚生病院 内科), 山瀬 裕彦(東濃厚生病院 内科)
抄録 大腸癌の化学療法は非常に進歩し、患者の生存期間の延長が著しいが、PSが3~4である場合や、高度の臓器障害を有する症例は原則的には化学療法の適応外とされている。私どもは、初診時、巨大多発性肝転移による非閉塞性黄疸を来たして全身倦怠感が強く、食欲不振で頻回の低血糖を来たしたPS3の患者に対して化学療法を施行した結果、著効が得られ、食欲が回復し、全身状態が改善した症例を経験した。ガイドラインでは化学療法の適応外とされていても、場合によっては良好な結果を得ることができるという意味で症例報告する。症例は65歳、男性。S状結腸に4分の3周性、2型の中分化型腺癌あり。CTにて著明な肝臓腫大、肝容積の65%を占める多発性巨大転移と少量の腹水を認めた。肝臓は7横指触れた。肝機能検査ではT-bil 6.0、D-bil 3.0、AST 243、ALT 70、γ-GTP 1143、LDH 5180と黄疸を認めたが、画像上は非閉塞性黄疸であった。CEAは962、CA19-9は6437と上昇していた。Hb 8.1と貧血も見られたため、輸血を4単位行った。頻回に低血糖(29~39)を起こし、ブドウ糖の静脈注射を何度も要した。患者と家族に深刻な病状を正確に説明し、緩和医療単独か化学療法を併用していくかを選択させた。有害事象により結果的に余命をさらに短縮させてしまう危険もあるが、効果があった場合は全身状態の改善と延命が得られると説明したところ、当方の責任は一切問わないので、化学療法の併用を希望された。大腸癌の切除は行わず、mFOLFOX6を初回は65%減量、2クール目は30%減量で施行。幸い有害事象は起きず、KRAS遺伝子が野生型であったことから、3クール目からcetuximabを加えて 20%減量で施行した。すると黄疸が徐々に消失、肝機能障害も改善、食欲回復、低血糖消失、PSは1に改善し、外来化学療法に移行できた。5ヵ月後には、T-bil 0.8、AST 42、 ALT 25、γ-GTP 580、LDH 469、Hb 13.0、CEA 61、CA19-9 273と改善し、肝臓腫大と腹水は消失した。
索引用語 進行大腸癌, 化学療法