セッション情報 一般演題

タイトル O-155:

高度の肝肺症候群で発症した若年NASH肝硬変の一例

演者 成田 諭隆(順天堂大学 医学部 附属静岡病院 消化器内科)
共同演者 玄田 拓哉(順天堂大学 医学部 附属静岡病院 消化器内科), 村田 礼人(順天堂大学 医学部 附属静岡病院 消化器内科), 廿樂 裕徳(順天堂大学 医学部 附属静岡病院 消化器内科), 佐藤 俊輔(順天堂大学 医学部 附属静岡病院 消化器内科), 金光 芳生(順天堂大学 医学部 附属静岡病院 消化器内科), 石川 幸子(順天堂大学 医学部 附属静岡病院 消化器内科), 菊池 哲(順天堂大学 医学部 附属静岡病院 消化器内科), 森 雅史(順天堂大学 医学部 附属静岡病院 消化器内科), 平野 克治(順天堂大学 医学部 附属静岡病院 消化器内科), 飯島 克順(順天堂大学 医学部 附属静岡病院 消化器内科), 市田 隆文(順天堂大学 医学部 附属静岡病院 消化器内科)
抄録 症例は36歳男性。主訴、呼吸困難。30歳時に頭蓋咽頭腫に対し開頭腫瘍摘出術の既往あり。常習飲酒歴なし。2012年12月末から呼吸困難が出現。2013年1月に当院受診、高度の低酸素血症を指摘され入院。入院時現症ではチアノーゼとばち指を認めた。生化学検査では肝胆道系酵素に異常は認めず、末梢血液像も正常所見であったが、凝固検査でPT 47%と低下を認めた。室内気下での血液ガス分析ではPaO2 47.8mmHg、PaCO2 30.2mmHg、AaDO2 64.2mmHgと高度の低酸素血症と肺胞動脈血酸素分圧格差の増大を認めた。各種肝炎ウイルスマーカー、自己抗体は陰性。呼吸機能検査は正常で、胸部レントゲン、CTでも肺野に異常所見を認めず。心エコー、右心カテーテル検査も異常認めず。肺血流シンチではシャント率63.4%と高度の右左シャントを認めた。腹部造影CTでは肝脾腫と門脈系側副血行路の発達を認め、腹部USでは脂肪肝を認めた。肝静脈カテーテル検査で閉塞肝静脈圧が20mmHgと上昇を認めた。経皮的肝生検を施行し得られた肝組織では、肝細胞のbalooningと脂肪化、肝細胞周囲と肝静脈周囲の線維化を伴う小結節性硬変肝であった。以上の結果から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)による肝硬変に合併した肝肺症候群と診断した。近年下垂体機能不全の患者はメタボリックシンドローム類似の病態を示すことが報告され、肝臓においては非アルコール性脂肪性肝疾患の合併率が高いことが明らかになっている。本症例も下垂体手術が原因となり、術後約5年と極めて短期間に進行したNASH肝硬変と考えた。近年、成長ホルモン分泌不全が脂肪肝や肝線維化の原因であり、補充療法が肝病態の改善に有効である可能性が報告されている。一方、肝肺症候群に対しては速やかな肝移植の適用が推奨されている。本症例も成長ホルモン補充療法を行いつつ、肝移植の可能性を検討している。
索引用語 肝肺症候群, NASH