セッション情報 一般演題

タイトル O-105:

消化管穿孔をきたしたNSAIDs起因性小腸潰瘍の1例

演者 大塚 裕之(公立学校共済組合 東海中央病院)
共同演者 水谷 泰之(公立学校共済組合 東海中央病院), 藤塚 宜功(公立学校共済組合 東海中央病院), 石川 英樹(公立学校共済組合 東海中央病院)
抄録 【症例】40代、女性【主訴】下腹部痛【既往歴】1年以上前より頭痛と関節痛あり、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)ロキソプロフェンナトリウムを内服中【現病歴】平成24年10月、下腹部痛あり急性腸炎の診断で入院。絶食と抗生剤による治療で症状は改善、経口摂取開始後も腹痛なく、第5 病日に退院。3日後に再度腹痛あり、救急受診。【経過】腹部所見では、腹部膨満、下腹部に圧痛あり、左下腹部に筋性防御を認め、CTでは上腹部からダグラス窩に腹水貯留と、遊離ガス像を認めたため、消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断し、緊急手術となった。手術所見では、直腸と癒着していた小腸の3箇所で折れ曲がり、最も炎症が強い口側の潰瘍に穿孔部を認めたため、回腸末端から20cmを肛門側として炎症を認める40cmを切除した。切除標本では小腸に3箇所の辺縁明瞭で1.5cm径の潰瘍を認めた。最も口側の潰瘍に穿孔を認め、いずれの潰瘍も漿膜面は折れ曲がるように漿膜同士が癒着していた。病理組織学的検索では、小腸間膜対側に合計3箇所の潰瘍形性を認め、いずれも深掘れ型のUL-IVの潰瘍で、口側の病変で穿孔を来していた。組織学的には潰瘍底は炎症細胞浸潤を伴った肉芽組織層によって構成され、類上皮肉芽組織等特異性は認めなかった。術後の経過は良好で、第6病日より食事を開始。第24病日には発熱、下痢がみられたため、GIF、CFを施行したが、十二指腸潰瘍を認めたのみであった。第36病日には下血あり、小腸潰瘍の再燃、IBDも否定できないため、カプセル内視鏡を施行。空腸に孤立性の血管拡張が数個、下部回腸に全周性潰瘍を認めたが、他に目立った炎症所見なく、炎症性腸疾患は否定された。その後の経過は良好で、経口摂取開始後も問題なく、第50病日に退院となった。退院後より、レバミピド、イルソグラジンマレイン酸塩の内服による治療を開始、1ヶ月後のカプセル内視鏡検査では、潰瘍は瘢痕化し治療効果を認めた。【考察】小腸潰瘍は比較的稀な疾患とされてきたが、近年その報告は増加している。今回我々は消化管穿孔をきたしたNSAIDs起因性小腸潰瘍の症例を経験したので報告する。
索引用語 小腸潰瘍, NSAIDs