セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル O-002:

化学療法中に大腸ステント内狭窄を認めるも原発巣が消失したS状結腸癌の1 例

演者 樋口 友洋(浜松医科大学 消化器内科)
共同演者 加藤 雅一(浜松医科大学 消化器内科), 岩泉 守哉(浜松医科大学 消化器内科), 山田 貴教(浜松医科大学 消化器内科), 杉本 光繁(浜松医科大学 消化器内科), 大澤 恵(浜松医科大学 消化器内科), 古田 隆久(浜松医科大学 消化器内科), 金岡 繁(浜松医科大学 消化器内科), 杉本 健(浜松医科大学 消化器内科)
抄録 【はじめに】本邦における大腸金属ステント留置は、(1)大腸癌術後の吻合部再発やSchnitzler転移による直腸狭窄、狭窄症状を伴う切除不能の大腸癌を含めた悪性腫瘍による狭窄(緩和医療目的)あるいは、(2)イレウス症状を併発する大腸癌で緊急手術回避目的(外科手術前の処置BTS; Bridge to Surgery)に対して適応であるが、切除不能例における全身化学療法導入前のステント留置に関しての適応は穿孔のリスクなどの点から議論の分かれるところである。今回我々は、大量腹水を認める切除不能進行結腸癌に対し金属ステントを挿入後、化学療法を導入し経過を観察し得た1例を経験したので報告する。【症例】47歳の女性。下痢と腹部膨満感を主訴に近医を受診。多量の腹水と多発性肝腫瘤、大腸内視鏡検査でS状結腸にスコープ通過不能な全周性狭窄病変を認め当科入院となった。精査の結果、狭窄病変と腹水から腺癌が検出されS状結腸癌(cStage IV)、多発肺肝転移、腹腔内播種と診断。大量の腹水のため原発巣の切除を選択せず、狭窄部に金属ステントを留置しmFOLFOX6療法を5コース施行したところ、ステント内の狭窄を認めた。CTでは腹水の著明な減少と肝転移巣の縮小を認めており、腹腔鏡下S状結腸切除術でステントを含めた原発巣を切除した。切除標本では残存癌を認めず、現在外来でbevacizmabを加えたmFOLFOX6療法を継続中でADLも良好である。【考察】過去の報告によると、ステント留置後のbemacizumabの投与の投与は穿孔のリスクを高めるが、総じてステント留置併用例に対する化学療法導入における重篤な合併症は少ないとされている。本例は大量腹水を認める切除不能進行結腸癌で金属ステント挿入後の化学療法が著効し、ステント狭窄を契機に原発巣も切除可能となり、さらに切除後stent freeになったことでbevacizmabを加えての化学療法の継続が可能になった症例であり、示唆に富むと思われる。
索引用語 大腸癌, 金属ステント