セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル O-114:

回盲部憩室炎から上腸間膜静脈分枝に穿通し上腸間膜静脈血栓症を来した1例

演者 木村 純(みよし市民病院)
共同演者 濱田 広幸(みよし市民病院), 伊藤 治(みよし市民病院), 成瀬 達(みよし市民病院), 柴田 時宗(みよし市民病院), 白月 遼(JA愛知厚生連 豊田厚生病院)
抄録 【症例】50代男性【現病歴】2012年8月7日から心窩部痛と下腹部痛が出現したために他院にて憩室炎と診断され抗生剤を投与された。しかし症状が続くため翌日当院を受診。右下腹部に反跳痛があり、腹部CTにて上行結腸から回盲部にかけて多発する憩室、腸管壁の浮腫を認め憩室炎と診断し入院加療となった。【入院後経過】第2病日に鮮血の下血が1回あり、40℃を超える発熱が見られたため腹部CTで再検したところ回盲部に炎症所見の強い憩室と隣接する上腸間膜静脈分枝血管内にairを認め一部は上腸間膜静脈本幹まで達していた。その後、下腹部痛は改善傾向がみられたが心窩部痛が増強、38℃を超える弛張熱を認め第6病日に腹部造影CTを施行したところ炎症の中心と思われる回腸末端の憩室は膿瘍状となり憩室外にわずかにfree airが見られ、そこから連なるように分枝血管内にもairを認めた。さらに同部位から上腸間膜静脈本幹内までの血栓を認め、血管周囲脂肪織の濃度上昇を認めた。以上より持続的な血管内穿通で敗血症、肝膿瘍の危険があること、血栓症・血管炎を起こしており、門脈閉塞や腸管血流障害を起こす可能性が懸念されたため血管外科のある施設での治療が必要と判断し豊田厚生病院へ転院となった。転院した翌日に準緊急手術となり回盲部切除を施行、血管系は回結腸静脈根部やや抹消まで切除。術後2日目からヘパリン化を開始。術後3か月の腹部造影CTでは上腸間膜静脈内の血栓が消失しており、ワーファリンを終了した。さらに3か月後の腹部造影CTでも所見に変化は見られず現在に至る。【結語】今回,我々は回盲部憩室炎から血管内穿通を来たし上腸間膜静脈血栓症を併発した一例を経験した。憩室炎から上腸間膜静脈血栓症を来したと思われる報告例は散見されるが、本症例はCTで血管内にairを継時的に確認でき上腸間膜静脈血栓形成までの過程が推察できた貴重な症例と思われたため報告する。
索引用語 回盲部憩室炎, 上腸間膜静脈血栓症