セッション情報 シンポジウム2「肝胆膵疾患の診断と治療の最前線」

タイトル S2-015:

当院における自己免疫性膵炎の検討

演者 小川 和昭(大同病院消化器内科)
共同演者 野々垣 浩二(大同病院消化器内科), 榊原 聡介(大同病院消化器内科), 藤城 卓也(大同病院消化器内科), 印牧 直人(大同病院消化器内科)
抄録 【はじめに】自己免疫性膵炎(AIP)で、特に問題となるのは膵癌との鑑別である。AIPの診断基準が普及したにもかかわらず、膵癌との鑑別に難渋する症例が存在する。今回、当科で経験したAIPについて臨床病理学的に検討し、各種modalityの有用性について考察したので報告する。【対象】対象は、2005年1月から2013年3月までに当院で経験したAIP6例。男性4例、女性2例で、年齢は58±14歳(42‐80歳)。観察期間は1580±956日(234‐2781)。【結果】初発症状は、腹痛3例、黄疸2例であった。初診時より糖尿病を2例に認めた。膵外病変として、顎下腺腫脹2例、縦隔リンパ節腫大1例、胸膜炎1例、腎炎1例、IgG4関連胆嚢炎2例を認めた。血清IgG4値は全例高値で、1102±815(224‐2310)であった。画像所見から、病変の広がりのtypeは、diffuse type 3例、focal type 3例であった。造影超音波検査では、染影パターンの相違により膵癌との鑑別に有用であった。治療はPSL投与により、全症例で著効したが、PSL投与を中止した2例ではいずれも再燃した。PSL治療前後で、Diffusion MRIを施行しADC値の変化を検討することによりその治療効果の確認に有用であった。病理所見では、EUS-FNA導入後3例に施行し、1例ではAIPに特徴的な病理所見を得ることができた。胆嚢炎を併発した2例では胆摘を施行し、いずれもIgG4関連疾患に矛盾しない病理所見を認めた。【考察】AIPでは、膵外病変を認める場合は再燃のリスクを指摘されており、当院においてもPSL投与中止後に再燃した2例はいずれも膵外病変を認めていた。限局型のAIPでは膵癌との鑑別が非常に重要であり、症例数は少ないものの、造影超音波検査やDiffusion MRIがその鑑別に有用と思われた。EUS-FNAによる組織診断については、悪性の否定だけでなく、AIPに特徴的な組織を得られる可能性がある。【結語】当院におけるAIP6例を検討した。さらに症例を蓄積し、膵癌との鑑別の観点から各種modalityの有用性について前向きに検討する必要がある。
索引用語 自己免疫性膵炎, 膵癌