セッション情報 シンポジウム1「消化管疾患の診断と治療の最前線」

タイトル S1-008:

大腸癌検診における便中ヘモグロビン・ラクトフェリン同時測定法の有用性に関する検討

演者 市川 裕一朗(藤田保健衛生大学病院 消化管内科)
共同演者 平田 一郎(藤田保健衛生大学病院 消化管内科), 吉岡 大介(総合大雄会病院)
抄録 【緒言】現在、大腸癌スクリーニングに便中ヘモグロビン(F-Hb)を測定する免疫学的便潜血検査が広く行われている。しかし、F-Hbは腸内細菌による変性、癌以外の腸管出血性疾患などの影響により偽陰性・偽陽性を呈することも少なくない。生体では癌に対する免疫応答が誘導され腫瘍局所に好中球が浸潤し特殊顆粒内蛋白を放出する。なかでもラクトフェリン(Lf)の放出量が一番多く、Lfが大腸癌スクリーニングのマーカーとして利用できる可能性が示唆される。本検討では、大腸癌症例のF-Lfを測定するとともに、F-HbとF-Lfを組み合わせた方法を考案し大腸癌スクリーニングにおけるその有用性について検討した。【対象・方法】対象は、腹部症状などの理由で大腸内視鏡検査を受けた1,174人である。対象者の採便を、金コロイド比色法を用いた免疫学的便潜血自動分析器を用いてF-HbとF-Lfの濃度を同時測定した。【検討】1.大腸癌症例におけるF-Lf単独判定法とF-Hb単独判定法のスクリーニング精度の比較。2.大腸癌症例におけるF-HbとF-Lfを組み合わせた方法(F-Hbカットオフ濃度(a)を従来の100ng/mlより高値に設定し、(a)以上のものを1次陽性者とし、(a)より低値に2次F-Hbカットオフ濃度(b)を求め、(a)と(b)の間の症例を2次陽性候補者とする。F-Lfカットオフ値(c)を求め、2次陽性候補者の中で(c)以上のものを2次陽性者とする。1次陽性者と2次陽性者を合わせてF-HbとF-Lfを組み合わせた方法の陽性者とする)とF-Hb単独判定法のスクリーニング精度の比較。【結果・考察】F-Lf判定法のみではF-Hb判定法を凌駕する成績は得られなかった。そこでF-HbとF-Lfを組み合わせた方法を考案し、大腸癌スクリーニングにおけるF-Hb判定法と比較検討した結果、女性の早期大腸癌症例で感度と陽性的中率の向上が認められ、男性の早期および進行大腸癌では特異度に有意の向上が認められた(P<0.05)。このことからF-HbとF-Lfを組み合わせた方法は、従来のF-Hb判定法に比し,男性および女性の両者において早期大腸癌のスクリーニングに有用であると考えられた。
索引用語 大腸癌, ラクトフェリン