セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル O-038:

滲出性腹水を呈した限局性強皮症の一例

演者 小串 勝昭(焼津市立総合病院)
共同演者 小平 誠(焼津市立総合病院), 佐野 宗孝(焼津市立総合病院), 寺澤 康之(焼津市立総合病院), 渡邉 幸弘(焼津市立総合病院), 山形 真碁(焼津市立総合病院)
抄録 【症例】71歳、女性【主訴】食思不振、腹部膨満感、足のむくみ、体重減少【既往歴】十二指腸潰瘍(5年前)【経過】平成24年8月頃より食思不振、腹部膨満感、足のむくみが出現。体重は10月頃から6kg/月程度減少した。近医受診し、腹水をみとめたため、10月末に近医総合病院を受診した。CTにて癌性腹膜炎の可能性を指摘され、検索のためEGD,注腸造影,CT,MRIを行うも明らかな腫瘍はみられなかった。CEA 4.1,CA19-9 22.9、CA125は304.1と高値であったため、婦人科腫瘍の検索のため11月初め当院産婦人科紹介受診となった。11月末、当院産婦人科にて、原発不明腹膜癌疑いで子宮・両側付属器切除、大網部分切除術を施行した。術中の腹腔内観察では、明らかな腫瘍や結節を認めなかった。小腸間膜には白色変化が目立つが播種結節はみられなかった。摘出標本からは悪性所見を認めず、腹水細胞診から異型細胞を指摘されるのみであった。12月の初めに行った腹水穿刺では比重 1.024、リバルタ反応陽性、タンパク 3149.9mg/dl、腹水LDH]/血清LDH 184/202、漿液性の滲出性腹水であった。12月中旬に原因不明の腹水について、総合内科にコンサルトとなった。手指尺側偏位、皮膚の硬化、Raynaud症状、手指の変形症状がみられ、血液検査からはセントロメア抗体1280倍、他の自己抗体は陰性であり、限局型強皮症が考えられた。12月下旬に術後イレウス症状がみられ、消化器科に転科、イレウス管留置で症状は軽快し、12月末にはイレウス管を抜去した。1月中旬に行った皮膚生検では強皮症に一致した所見がみられた。1月末には逆流性食道炎による食道狭窄に対してバルーン拡張術を行った。術後も食道に食物残渣が多量に残ることから、2月中旬に胃瘻造設、現在は消化器科外来通院で経過を観察している。【考察】膠原病を原因とする腹水はSLEで報告がみられるが、強皮症が原因となる腹水の報告例は少ない。今回強皮症が関連すると考えらえる腹水貯留の一症例を経験した。強皮症診療ガイドラインでの推奨度は低いが、食道狭窄に対してはバルーン拡張術、胃瘻造設を行い現在経過良好である。
索引用語 腹水, 強皮症