セッション情報 | 一般演題 |
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タイトル | O-149:抗菌薬動注療法が奏功した肝膿瘍の1例 |
演者 | 松浦 友春(静岡市立清水病院 消化器内科) |
共同演者 | 窪田 裕幸(静岡市立清水病院 消化器内科), 池田 誉(静岡市立清水病院 消化器内科), 川崎 真佑(静岡市立清水病院 消化器内科), 小池 弘太(静岡市立清水病院 消化器内科) |
抄録 | 【症例】67歳女性、既往歴に特記事項なし。来院4日前から発熱と右季肋部痛が出現、近医にてアジスロマイシン(AZM)処方されたが改善せず、その後発熱と腹痛が増悪したため当院紹介となった。来院時38.5℃の発熱、血圧低下を認めた。腹部超音波検査および腹部造影CTにて肝左葉ほぼ全域とS4にかけて13x9cm大の多房性嚢胞性腫瘤を認めた。血液検査にて炎症反応および肝胆道系酵素の上昇を認めたため多発肝膿瘍による敗血症性ショックと診断した。【経過】来院後、肝左葉の膿瘍に対し経皮経肝膿瘍ドレナージ(PTAD)を施行したが、膿瘍が多房性のため排液量が少なく、その後も発熱持続したため、ドレナージによる効果は期待できないと判断、PTADの2日後、Seldinger法にて左肝動脈にカテーテルを留置し、抗菌薬動注療法を開始した。抗菌薬はスルバクタムナトリウム・セフォペラゾンナトリウム(SBT/CPZ)1gを1日3回投与した。血液および肝膿瘍からの細菌培養はKlebsiella pneumoniaeを認めた。動注療法開始翌日には解熱、その後炎症反応も徐々に改善したため13日後に動注療法を終了した。その後SBT/CPZの点滴静注のみ継続し、動注療法終了後8日目(第28病日)からはPTAD排液がほとんど認められなくなった。第40病日にPTADをクランプしたが発熱等や炎症反応悪化することなく経過したため抜去した。抜去3日後の造影CTにて肝S5の膿瘍の増大を認めたが、PTADと経静脈的抗菌薬投与にて軽快し、第65病日に軽快退院した。【考察】肝膿瘍に対する治療は抗菌薬投与とPTADが一般に行われている。オプションの治療として開腹ドレナージや抗菌薬動注療法があるが、それらの治療効果についての明確なエビデンスはない。今回我々は経静脈的な抗菌薬投与とPTADによる治療で効果なく、抗菌薬動注療法により改善した敗血症合併肝膿瘍の1例を経験した。肝膿瘍に対する抗菌薬動注療法の報告は少ないが、抗菌薬投与とPTADにて効果が得られない症例に対して肝動注療法は有効な手段と考えられた。若干の文献的考察を加えて報告する。 |
索引用語 | 抗菌薬動注, 肝膿瘍 |