セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル O-029:

内視鏡検査により縦走裂創を発症したCollagenous colitisの1例

演者 白鳥 安利(静岡市立静岡病院 消化器内科)
共同演者 田中 俊夫(静岡市立静岡病院 消化器内科), 近藤 貴浩(静岡市立静岡病院 消化器内科), 黒石 健吾(静岡市立静岡病院 消化器内科), 中村 尚広(静岡市立静岡病院 消化器内科), 吉川 恵史(静岡市立静岡病院 消化器内科), 濱村 啓介(静岡市立静岡病院 消化器内科), 高橋 好朗(静岡市立静岡病院 消化器内科), 小柳津 竜樹(静岡市立静岡病院 消化器内科)
抄録 【症例】70歳代男性。【主訴】慢性下痢。【既往歴】30年前より高血圧、2年前脳梗塞で右上下肢不全片麻痺。【現病歴】高血圧、脳血管障害のため近医通院中。降圧剤、抗血小板剤とともに23年10月よりランソプラゾール15mg服用中。今回24年2月初旬より1日3行程度の泥状便が持続し、加療により回復しなかった。そのため24年3月初旬に当科を紹介受診した。便培養では有意菌検出なし。そこで精査目的のため大腸内視鏡検査を施行した。その結果、スコープ挿入時には問題を認めなかったが抜去観察時に横行結腸中央付近と、脾弯曲部分に約4~5cmに及ぶ縦走した裂創を認めた。また部分的には2列の裂創を認めた。潰瘍底には粘膜筋板を認め、粘膜面のみの損傷と思われ、出血は軽微であった。同時に施行した生検により、粘膜固有層表層に20~40μmの硝子様膠原線維沈着を認めた。以上よりCollagenous colitis(以下CC)と診断した。治療としてランソプラゾールを中止したところ約1週間で下痢は改善した。【考察】CCは1976年スウェーデンのLindstromにより提唱された疾患である。原因不明の慢性下痢を主徴とし、画像診断ではほとんど特徴がなく、生検で粘膜面にコラーゲン沈着が見られる疾患である。本邦では近年増加しているが、海外報告と比較して本邦報告例では、(1)薬剤(ランソプラゾール)が原因のと思われる症例が多いこと(2)内視鏡で縦走潰瘍を認めることが多い、ことがあげられる。今回は内視鏡検査中に発症した縦走裂創を観察することができた。これはおそらくスコープによる腸管の圧排、伸展により生じたものと考えられた。【結語】今回内視鏡検査時のスコープによる刺激が原因で生じた、縦走裂創を経験した。これはCollagenos colitisにしばしば見られる縦走潰瘍の発生要因として示唆に富む症例と思われた。
索引用語 Collagenous colitis, 縦走潰瘍