セッション情報 シンポジウム2「肝胆膵疾患の診断と治療の最前線」

タイトル S2-002:

当院におけるDDW-J 2004薬物性肝障害診断基準案を用いた慢性腎臓病合併の有無による薬物性肝障害の検討

演者 綾田 穣(増子記念病院 肝臓内科)
共同演者 石川 哲也(名古屋大学 医学部 保健学科 検査技術科学専攻 基礎検査学), 堀田 直樹(増子記念病院 肝臓内科), 中野 達徳(藤田保健衛生大学 七栗サナトリウム 内科), 黒川 剛(増子記念病院 肝臓外科)
抄録 【目的】慢性腎臓病 ( CKD ) 合併の有無による薬物性肝障害( DILI ) の現状と傾向について2004年の診断基準案を適応し検討した.【方法】対象は当院でDILIと診断された症例のうち,データ解析が可能であった58症例である.CKDの有無により2群に分け,診断基準案を用い比較検討を行った.【成績】原因疾患は,両群とも感染症,消化器,循環器疾患が上位を占めた.原因薬物は,NCKD(non CKD)群では,抗生物質(1位:50%)と解熱・鎮痛・抗炎症剤(2位:12%)の頻度が高く,健康食品・漢方薬・ビタミン剤(3位:10%)も上位を占めた.一方,CKD群でも最も頻度が高いものは,抗生物質(1位:45%)であったが,解熱・鎮痛・抗炎症剤は,8%と第3位で,2位は,造血と血液凝固関係製剤(28%)であった.CKD群ではこれらの薬剤を投与する機会が多いためと推察された.NCKD群において初発症状を欠くものが約38%存在した.CKD群ではさらに多く,約68%の症例が初発症状を欠いた.CKDでは糖尿病合併例もみうけられ,神経障害が関与していることなどが原因と推察された.臨床病型では,NCKD群では肝細胞障害型が 50%と半分を占め,残りを胆汁うっ滞型と混合型が二分した.CKD群では胆汁うっ滞型が 46% と最も多かった.診断基準案の項目における検査の施行率は両群とも,白血球分画,腹部画像検査,HBV-Ag,HCV-Abの施行率は高く,70%を超えるものであった.しかし,他の項目では,施行率は50%前後であった.DLST施行率はCKD群で48%,NCKD群で22%であった.診断基準案の平均スコアは,NCKD群:6.0±1.4,CKD群:6.1±1.5. 判定(NCKD群/CKD群):可能性が高い(70% / 56%),可能性あり(23% / 37% ),可能性が低い(7% / 7%)であった.【結論】両群とも原因に抗生物質が多く,抗生物質を投与する際には注意が必要である.CKD群では,症状なく肝障害を発症しているものが約 70%であり,ALTが低値を示す傾向があり,薬物の投与にあたっては,NCKD群よりもさらなる注意が必要であると考えられた.診断基準案は,両群ともに診断率は高かく有用であった.
索引用語 薬物性肝障害, 慢性腎臓病