セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル O-053:

保存的治療にて治癒した虚血性胃炎の1例

演者 廣瀬 崇(豊橋市民病院 消化器内科)
共同演者 山本 英子(豊橋市民病院 消化器内科), 浦野 文博(豊橋市民病院 消化器内科), 藤田 基和(豊橋市民病院 消化器内科), 内藤 岳人(豊橋市民病院 消化器内科), 山田 雅弘(豊橋市民病院 消化器内科), 松原 浩(豊橋市民病院 消化器内科), 竹山 友章(豊橋市民病院 消化器内科), 田中 卓(豊橋市民病院 消化器内科), 田中 浩敬(豊橋市民病院 消化器内科), 鈴木 博貴(豊橋市民病院 消化器内科), 芳川 昌功(豊橋市民病院 消化器内科), 岡村 正造(豊橋市民病院 消化器内科)
抄録 【症例】66歳 男性【主訴】上部消化管出血【既往歴】慢性腎不全, 脳出血, 糖尿病, 狭心症, 過活動性膀胱【生活歴】喫煙:20本/日 20年 飲酒:1合/日【現病歴】平成25年2月透析後から心窩部の違和感,吐血を認めた. 近医にて上部消化管内視鏡検査(GIS)を施行し,上部消化管出血の診断にて紹介となった.【来院時現症】BP106/65mmHg HR66bpm BT36.7℃ SpO2:94%(r.a.) 眼瞼結膜:貧血なし, 腹部:自発痛,圧痛なし【来院後経過】GISでは胃穹窿部から胃体下部後壁にかけて広範に高度な浮腫を伴う暗赤色の粘膜を認めた.白苔の付着したびらん局面を伴い,凝血塊の付着も認められた. 虚血による壊死を疑い行った造影CT検査では,胃壁の著明な浮腫を認めるが,明らかな動脈の閉塞は認めず,胃壁の血流も保たれていたため外科的治療は行わず,絶飲食とPPI点滴静注にて保存加療とした. 第3病日のGISでは,広範なびらんと粘膜の発赤が残るが,粘膜は再生し,浮腫は軽快していた. 第9病日には,浮腫は消失し,再生上皮に覆われており,第10病日に退院とした.退院約1ヶ月後に再検したGISでは,胃内は瘢痕も残さず治癒していた.【考察】胃は多くの血管から血流支配を受けており,腸管などの他臓器と比較すると虚血性変化は稀である. 本邦において医学中央雑誌刊行会で検索(キーワード:虚血性胃炎,虚血性胃症,1992年~2013年)した限り9報告,10症例の報告があるのみである. それらの報告の中では喫煙,糖尿病,高血圧,高脂血症,利尿剤,ジキタリス製剤の内服がリスクとして挙げられている. 本症例では喫煙,糖尿病を認めていた. また維持透析患者であり,透析による血行動態の急激な変化が発症に関与した可能性も考えられる. また死亡例も3例認められるが,いずれの症例もCTでは臓器の血流不全を疑う所見はあっても,明らかな動脈の閉塞所見は認めておらず,外科治療を決断するタイミングが難しい点が共通していた. 本症例では内視鏡所見としては強い虚血性変化を認めたが,保存的加療のみで軽快し,内視鏡的所見の経時的変化を追えた貴重な症例であり,ここに報告する.
索引用語 虚血性胃炎, 内視鏡