セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル O-067:

IVRにより良好な止血が得られた出血性十二指腸潰瘍の一例

演者 倉田 知幸(静岡済生会総合病院 消化器内科)
共同演者 山口 晴雄(静岡済生会総合病院 消化器内科), 日比 知志(静岡済生会総合病院 消化器内科), 河合 学(静岡済生会総合病院 消化器内科), 神谷 麻子(静岡済生会総合病院 消化器内科)
抄録 【症例】80歳台女性【主訴】吐血【既往歴】2005年;ペースメーカー挿入【現病歴】2013年1月に吐血を主訴に当院救命救急センターへ救急搬送された。【経過】来院時血圧は60/47 mmHgとショック状態にあったが、急速補液と輸血によりショック状態から離脱し血圧は安定した。緊急上部消化管内視鏡検査を行うと十二指腸球部前壁に血塊が多量に付着した潰瘍を認めたが、潰瘍が大きいうえに多量の凝血塊のため十分な視野の確保が困難で、観察時には既に自然止血が得られていたことから、トロンビン散布のみとし、PPI投与による加療を開始した。入院翌日に内視鏡再検査を行ってみると、活動性出血は認めなかったが潰瘍底に拍動を認める3mm大の露出血管を認め、来院時の出血状況を考えると安全に内視鏡的止血術を行うことは困難と判断した。腹部血管造影CT検査では、胃十二指腸動脈が十二指腸壁内に貫通しており出血源と考えられたため、腹部血管造影検査を行った。検査中に胃十二指腸動脈から造影剤の漏出を認めたため、同部にマイクロコイルによる塞栓術を施行し、止血術後は明らかな消化管出血の徴候は認めなかった。塞栓術4日後の内視鏡検査では潰瘍底に白苔が均一に付着し露出血管は埋没しており、塞栓術14日後の内視鏡検査では潰瘍が治癒傾向にあることを確認し退院となった。【結語】上部消化管出血に対する止血処置として第一選択は内視鏡的止血術で、当院でもほとんどの症例が内視鏡的に止血術が行われている。しかし今回の症例では、来院時の出血状況と内視鏡所見などから内視鏡的止血術はリスクが高いと判断し、当初よりIVRによる止血術を選択することでより安全且つ良好な止血を得ることができたものと考えている。内視鏡的に止血が得られない症例や、今回のように内視鏡的止血術が困難と判断される症例では、外科手術やIVRが必要となる症例が存在するため、治療法の選択や時期など適切な判断が必要であると考えられる。今回我々は、胃十二指腸動脈からの出血を伴った出血性十二指腸潰瘍に対して、IVRにて良好な止血が得られた一例を経験したので報告する。
索引用語 出血性十二指腸潰瘍, 止血術