セッション情報 シンポジウム1「消化管疾患の診断と治療の最前線」

タイトル S1-013:

潰瘍性大腸炎術後回腸嚢炎予測因子としての大腸全摘時回腸粘膜組織中FK506 binding protein 5,Nuclear receptor coactivator 2の可能性

演者 川村 幹雄(三重大学 消化管小児外科学)
共同演者 荒木 俊光(三重大学 消化管小児外科学), 田中  光司(三重大学 消化管小児外科学), 大北 喜基(三重大学 消化管小児外科学), 藤川 裕之(三重大学 消化管小児外科学), 井上 靖浩(三重大学 消化管小児外科学), 毛利 靖彦(三重大学 消化管小児外科学), 内田 恵一(三重大学 消化管小児外科学), 楠 正人(三重大学 消化管小児外科学)
抄録 【背景】潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘,J型回腸嚢肛門吻合(IPAA)後の約50%に回腸嚢炎が発症し,治療抵抗性,難治性症例では患者QOLを著しく低下させている.これまでに術後回腸嚢炎発症と術前ステロイド投与との関連が示唆されており,我々もステロイドと回腸嚢炎発症との関連性に着目し報告してきた.今回,ステロイドシグナル伝達経路の一部であり,多様な蛋白質の構造変換に関与していると考えられるFK506 binding protein 5 (FKBP51),Nuclear receptor coactivator 2(NCOA2)と術前,術中,術後因子とくにIPAA後回腸嚢炎発症との関連を検討した.【対象と方法】2004年5月から2010年12月までに当科で大腸全摘,J型回腸嚢肛吻合を施行した潰瘍性大腸炎患者のうち,初回手術時に回腸末端の粘膜が採取できた71例を対象とした.これらよりtotal RNAを抽出し,Real time PCR法でFKBP51,NCOA2発現を定量化した.これらの発現と周術期因子および回腸嚢発症との関連について検討した.【結果】NCOA2,FKBP51発現と術前,術中,術後因子,周術期血液検査値との間に有意な関連は認めなかった.NCOA2,FKBP51発現量の中央値をcut-off値とすると,これらの高発現群は低発現群に比べ有意に累積回腸嚢炎発症率が高かった.【結語】回腸嚢炎発症における分子生物学的原因は不明な点が多いが,潰瘍性大腸炎患者の回腸粘膜におけるNCOA2, FKBP51は,大腸全摘,IPAA後回腸嚢炎発症予測因子として有用である可能性がある.
索引用語 潰瘍性大腸炎, 回腸嚢炎