セッション情報 一般演題

タイトル O-021:

クローン病術後の残存直腸に発見された粘液癌の1例

演者 前田 啓子(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学)
共同演者 安藤 貴文(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 石黒 和博(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 前田 修(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 渡辺 修(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 氏原 正樹(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 平山 裕(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 森瀬 和宏(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 松下 正伸(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 舩坂 好平(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 中村 正直(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 宮原 良二(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 後藤 秀実(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学)
抄録 症例は50歳代、男性。1987年(20歳代半ば)右下腹部痛のため近医受診し、大腸内視鏡検査(CS)でクローン病(CD)が疑われた。1989年、肛門周囲膿瘍を発症し、切開排膿を受け、諸検査でCDと診断された。1992年4月に回盲部切除を受け、1998年肛門周囲膿瘍の悪化のため、seton法による治療を受けたが、膿瘍の再発を繰り返した。2002年6月に左睾丸の腫脹を認め、精査にて左陰嚢直腸瘻、左精巣上体炎と診断され、抗生剤の投与を受けた。2003年6月より2回Infliximab(IFX)の投与を受けたが、症状の改善がみられなかったため、当院に2003年11月に紹介、入院精査となった。CSでは肛門の狭小化、直腸から横行結腸小腸吻合部までアフタ、小潰瘍が散在、CT・MRIで肛門周囲膿瘍を認めた。外科での診察の結果、膿瘍に対しては保存的治療となり、また成分栄養療法を指導して退院となった。退院後、尿路感染症を繰り返したため、2004年9月にS状結腸に双孔式人工肛門造設、痔瘻に対してはseton再挿入が行われた。手術後も、肛門から仙骨にかけての痛みが続いたので、2006年11月にIFXを再開、維持療法を行った。IFX投与後、肛門痛は消失しなかったが軽快した。2011年12月頃から肛門痛が悪化したためCT検査を施行した。痔瘻を認めたが、前年施行したCTと比べ、著変はなかった。2012年4月から腹痛、肛門痛が悪化したため、IFXの投与間隔を7週に短縮した。短縮後、腹痛は改善したが、肛門からの粘液が増えたため、11月にCSを行った。肛門狭窄のため肛門から内視鏡は挿入できず、双孔式人工肛門から肛門側に内視鏡を挿入した。直腸に白色粘液が多量に付着した隆起性病変を認め、生検で粘液癌と診断された。MRIなどで治癒切除は困難と考えられ、12月から化学療法(FOLFOX)を開始した。今回、難治性痔瘻を有する術後CD患者の残存直腸に粘液癌を認めたので、若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 炎症性腸疾患, 粘液癌