セッション情報 一般演題

タイトル 077:

直腸癌切除後の腰椎転移が化学療法によりCRとなった後、休薬後30ヶ月で肺と肝に多発性転移をきたした腰椎転移後82ヶ月目の1例

演者 吉田 正樹(東濃厚生病院 内科)
共同演者 宮本 陽一(東濃厚生病院 内科), 野村 翔子(東濃厚生病院 内科), 荒川 直之(東濃厚生病院 内科), 長屋 寿彦(東濃厚生病院 内科), 藤本 正夫(東濃厚生病院 内科), 山瀬 裕彦(東濃厚生病院 内科)
抄録 再発大腸癌に対する治療成績はFOLFOX・FOLFIRI療法の認可以降、格段に向上し、臨床的にCRとなった症例の報告が散見されるようになった。その場合、いつまで化学療法を続けるべきか、一旦、化学療法を中止して良いものか、中止した場合の再々発はないのかなど、臨床的な基準が定まっておらず、主治医と患者にとっては悩ましい。私どもも今後の対応を考える上で貴重な症例を経験したので、問題提起の1例として報告する。症例は55歳女性。2006年3月に下部直腸癌で直腸切断術施行。中分化型腺癌、a2、ly3、v1、N1であった。術後はUFT400mgを内服していた。11ヵ月後に第5腰椎の後方部分に2×3cmの単発性の骨転移を発症。組織診で再発と診断し、FOLFOX4を9クール施行。FOLFOX4を6クール施行後の腰椎CTではCRとなっていた。手足の神経障害出現のため、以後はFOLFIRIを63クール施行した。37ヶ月間CRを維持したため、化学療法を一旦中止し、経過観察とした。化学療法中断後30ヶ月目の胸部~骨盤CTで、多発性肺転移、肝転移をきたし、再々発と診断した。骨転移は見られなかった。腫瘍マーカーは直腸癌切除前と再発時には上昇していなかったが、再々発時にはCEAが50まで上昇していた。PSは0を維持していたため、初回に著効したmFOLFOX6を再開したところ、速やかに肺と肝の転移巣は縮小し、CEAは基準値以下となった。なお、患者の意向で、初回再発時も今回の再々発時にも分子標的薬の併用は行っていない。現在のところ、腰椎転移を発症して82ヶ月目であり、初回再発時と同じレジメンで外来化学療法を行っている。再発大腸癌では化学療法単独での病理学的CRはまずないと理解しているが、余りにも長期にCRが維持された場合、化学療法の一時中断が可能ではないかと医師、患者双方で悩むところである。本症例では化学療法の中断後30ヶ月目で再々発をきたしたが、この間、患者は化学療法から解放され、定期的な診察にのみ来院し、非常に良い体調であった。
索引用語 大腸癌, CR