セッション情報 一般演題

タイトル 010:

聴力や視力低下を契機に発見された、胃癌による癌性髄膜炎の2症例

演者 栗本 拓也(名古屋共立病院 消化器化学療法科)
共同演者 須藤 晃祐(名古屋共立病院 消化器内科), 中村 大樹(名古屋共立病院 消化器内科), 加藤 一樹(名古屋共立病院 消化器内科)
抄録 【緒言】癌性髄膜炎は、胃癌患者の1%以下で認められる予後不良な合併症である。初発症状は頭痛や悪心嘔吐など非特異的なものが多く、疑った場合には積極的な精査が必要である。経過中に多彩な神経症状を呈し、各種検査を行うも原因を特定できず、最終的に髄液細胞診で癌性髄膜炎の診断に至った進行胃癌の2例を以下に提示する。
【症例】症例1:66歳男性、胃粘液癌。胃切除術を行うも術中に腹膜播種を確認したため、TS-1による化学療法を開始した。手術9ヶ月後に強い頭痛が出現し、ふらつきや視野欠損・聴力低下が続発した。各種検査で原因を特定できず腰椎穿刺を実施したところ、髄液細胞診で腺癌を確認した。オキシコドン持続静注やステロイド点滴による対症療法を行ったが、症状は悪化し失明・失聴となった。癌性髄膜炎の診断1.5ヶ月後に死亡した。
症例2:74歳男性、胃低分化腺癌。腹水より腺癌を確認し切除不能な進行癌と判断、パクリタキセルによる化学療法を開始した。7ヶ月後にふらつきや複視が出現し、さらに後頚部痛や下肢の脱力が続発し、歩行困難となった。腰椎穿刺を実施したところ、髄液細胞診で低分化腺癌を確認した。その後は頭痛や嘔気が持続し、視力低下から失明に至り聴力も低下した。オキシコドン持続静注やステロイド点滴で対応したが、癌性髄膜炎の診断1ヶ月後に死亡した。
【考察】2症例とも、化学療法中に複数の神経症状が出現し原因の特定に苦慮するも、最終的に髄液細胞診で癌性髄膜炎の診断に至った。異時性・両側性に生じた聴力低下が急速に進行する経過は、癌性髄膜炎の推移として特徴的との報告がある。このため、癌の経過中に出現した神経症状のなかでも特に聴力低下を認めた場合には、積極的に腰椎穿刺を実施し癌性髄膜炎の鑑別が必要と考えられる。
索引用語 胃癌, 癌性髄膜炎