セッション情報 シンポジウム「炎症性腸疾患の診断と治療 up-to-date」

タイトル S-14:

潰瘍性大腸炎に対する腹腔鏡下大腸全摘術の手術侵襲、術後回復に与える影響の検討

演者 藤川 裕之(三重大学 消化管・小児外科学)
共同演者 荒木 俊光(三重大学 消化管・小児外科学), 大北 喜基(三重大学 消化管・小児外科学), 野口 智史(三重大学 消化管・小児外科学), 小池 勇樹(三重大学 消化管・小児外科学), 川本 文(三重大学 消化管・小児外科学), 大竹 耕平(三重大学 消化管・小児外科学), 廣 純一郎(三重大学 消化管・小児外科学), 井上 幹大(三重大学 消化管・小児外科学), 問山 裕二(三重大学 消化管・小児外科学), 小林 美奈子(三重大学 消化管・小児外科学), 大井 正貴(三重大学 消化管・小児外科学), 田中 光司(三重大学 消化管・小児外科学), 井上 靖浩(三重大学 消化管・小児外科学), 内田 恵一(三重大学 消化管・小児外科学), 毛利 靖彦(三重大学 消化管・小児外科学), 楠 正人(三重大学 消化管・小児外科学)
抄録 【目的】潰瘍性大腸炎に対する腹腔鏡下大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術(Lap-IPAA)の手術侵襲、術後回復に与える影響を後ろ向き研究により明らかとすることを目的とした。【対象と方法】当教室で実施したIPAA270例中、Lap-IPAAが行われた 20例を対象とし、下腹部7cmの小開腹IPAA31例を対照とした。手術侵襲の評価として手術成績および周術期(術直前、術直後、第1、3、7病日)の血中サイトカイン(IL6、 IL8、 IL1ra)とCRPを測定し、両群間の比較を行った。また、術後疼痛に関する指標として術後ルーチン鎮痛剤以外のオピオイドまたはNSAID投与回数を、術後の腸管機能回復の指標として術後絶食期間を、そして総合的な術後経過指標として術後在院日数の3点について比較を行った。【結果】Lap-IPAAは手術時間が長く、出血量は少なかった。術後合併症(SSI、 回腸嚢関連合併症)発生率に有意差は認めなかった。周術期の血中サイトカインの比較において、Lap-IPAAの術直後のIL6および手術翌日のCRPは小開腹IPAAよりも有意に低値であったが、その他の血中サイトカイン値に有意差は認められなかった。Lap-IPAAは小開腹IPAAと比較して術後絶食期間が有意に短かった(2.17+1.02 vs 2.01+1.26日、P=0.022)。鎮痛剤投与回数は少ない傾向(2.17+1.02 vs 3.01+1.26回、P=0.0744)が示されたものの、術後在院日数には有意な差は認められなかった(20.2+10.4 vs 21.0+6.9日、P=0.216)。【結論】Lap-IPAAは、手術時間は延長するものの、出血量および手術侵襲は少なく、術後腸管機能回復の面で従来の小開腹に対して明らかな優位性があり小開腹IPAAと遜色ない手術成績を提供できる可能性が示唆された。
索引用語 潰瘍性大腸炎, 腹腔鏡下手術