セッション情報 シンポジウム「炎症性腸疾患の診断と治療 up-to-date」

タイトル S-15:

クローン病の術後における抗TNF-α抗体維持療法の再発抑制効果と安全性に関する検討

演者 薮崎 紀充(名古屋大学大学院医学系研究科 消化器外科学)
共同演者 中山 吾郎(名古屋大学大学院医学系研究科 消化器外科学), 高野 奈緒(名古屋大学大学院医学系研究科 消化器外科学), 高見 秀樹(名古屋大学大学院医学系研究科 消化器外科学), 村井 俊文(名古屋大学大学院医学系研究科 消化器外科学), 岩田 直樹(名古屋大学大学院医学系研究科 消化器外科学), 神田 光郎(名古屋大学大学院医学系研究科 消化器外科学), 小林 大介(名古屋大学大学院医学系研究科 消化器外科学), 田中 千恵(名古屋大学大学院医学系研究科 消化器外科学), 山田 豪(名古屋大学大学院医学系研究科 消化器外科学), 藤井 努(名古屋大学大学院医学系研究科 消化器外科学), 杉本 博行(名古屋大学大学院医学系研究科 消化器外科学), 小池 聖彦(名古屋大学大学院医学系研究科 消化器外科学), 野本 周嗣(名古屋大学大学院医学系研究科 消化器外科学), 藤原 道隆(名古屋大学大学院医学系研究科 消化器外科学), 小寺 泰弘(名古屋大学大学院医学系研究科 消化器外科学)
抄録 はじめに:抗TNF-α製剤の定期的投与はCrohn病(CD)の寛解維持に有効とされる.今回われわれはCDに対する術後の維持療法として使用されたインフリキシマブ(IFX)およびアダリムマブ(ADA)の有効性,安全性について検討を行った.対象・方法:2007年1月からの5年間で、当院においてCD腸管病変に対する腸管切除・吻合術が施行され,1年以上の治療、経過観察が行われた111例を対象とし,寛解維持療法としてIFXが投与された群:41例,ADAが投与された群:21例,および抗TNF-α抗体療法以外の治療が行われた群(control群):49例,について治療状況,短期治療成績(臨床的再発率,内視鏡的吻合部再発率),治療継続率,有害事象発生割合等についてretrospectiveに比較検討を行った.結果:3群間で患者背景(年齢・性・病型・喫煙歴など)に差は認めなかった.治療状況は,術後8週間以内の治療導入率:IFX群 76%,ADA群 81%,相対的容量強度:IFX群で89%,ADA群97%,術後1年間治療継続率:IFX群 93%,ADA群 100%であり,ADA群で治療継続率がやや高かった.治療成績は,術後1年臨床的再発率:IFX群 21%vs. control群 p=0.001,vs. ADA群: p=0.470),ADA群 19%(vs. control群 p=0.001),control群 57%,術後1年内視鏡的吻合部再発率:IFX群 12%(vs. control群 p=0.042,vs. ADA群: p=0.844),ADA群 10%(vs. control群 p=0.059),control群 31%であり,IFX群,ADA群ともにcontrol群に較べて有意に再発率の低下が認められたが,IFX群・ADA群間での差は認めなかった.また,有害事象としては,IFX 群でinfusion reaction 2%,アレルギー 7%,肝機能障害 5%等,ADA群で好中球減少 10%,肝機能障害 5%等であった.結語:抗TNF-α抗体寛解維持療法は,術後としての治療継続率は良好であり,臨床的再発率を低下させることが示唆された.また,内視鏡的吻合部再発率は再手術率を反映する一つの指標とされるが,IFX・ADAともにこれを低下させる可能性が示された.今後さらなる経過観察を加え,より詳細な比較検討を加えたいと考えている.
索引用語 インフリキシマブ, アダリムマブ