セッション情報 シンポジウム「炎症性腸疾患の診断と治療 up-to-date」

タイトル S-08:

当院における難治性潰瘍性大腸炎に対する免疫調節薬の有用性に関する検討

演者 小木曽 富生(岐阜市民病院 消化器内科)
共同演者 杉山 昭彦(岐阜市民病院 消化器内科), 加藤 則廣(岐阜市民病院 消化器内科)
抄録 【目的】 潰瘍性大腸炎(UC)の治療薬は5-ASAが基本薬剤であるが、一方では維持療法として副作用の強いステロイド剤(PSL)の投与を使用せざるを得ない症例も少なくない。PSL依存例に対するチオプリン製剤の有用性が知られており、PSLの離脱減量に効果がある。また寛解導入においてPSL抵抗例に対するタクロリムス(FK-506)の投与が保険適応となり臨床的有用性が注目されている。今回、我々は当院においてUCに対する免疫調節薬の有用性について後ろ向きに検討を行った。【対象】2011年4月から2013年8月まで当科で治療を行ったUC患者143例。平均発症年齢は38.6±18.5(4-77)歳で、平均罹患年数9.5±9.0(0.1-45)年、男女比は1.1:1であった。【成績】この期間において寛解導入治療は143例中84例に施行。PSL抵抗例は7例認め、寛解導入にFK-506を7例(うち2例は兄弟症例)10回使用した。7例中6例で寛解導入が得られた。3例で一時的に肝機能障害を認めたが、トラフ値の安定により改善。また3例で頭痛、1例において振戦を認めた。7例中3例において寛解導入後に再燃を認め、1例はPSLで寛解、2例で再導入し一時寛解を得たが、維持ができずに手術となった。 一方、PSL依存例寛解維持目的に免疫調節薬を31例に投与。AZAが29例、6-MPが2例であった。投与中中止または変更した例は11例あった。理由は効果減弱のために変更した症例が2例、副作用(頭痛、肝障害)にて変更が2例、副作用にて中止した例が4例(肝機能障害3例、骨髄抑制1例)、また寛解維持にて中止した例が3例あった。AZAおよび6-MPによる平均寛解維持期間は12.9±12.1(1-50)か月であった。23例がPSLから離脱でき、6例は離脱に向けて減量中である。 【結論】UC患者の免疫調節薬治療につき検討した。チオプリン製剤はPSLの減量や離脱に有効であり、維持療法として免疫調節薬は高い有用性が示唆された。またFK-506は高い寛解導入が得られたが、維持療法は保険診療上で困難であり、中止後に3例で再燃、2例が手術に至った。今後、FK-506における維持療法の保険適応が期待される。
索引用語 潰瘍性大腸炎, 免疫調節薬