セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 009:

切除不能胃癌に対するTS-1+Cisplatin併用療法中に可逆性後頭葉白質脳症を発症した1例

演者 三浦 眞之祐(安城更生病院 消化器内科)
共同演者 竹内 真実子(安城更生病院 消化器内科), 東堀 諒(安城更生病院 消化器内科), 脇田 重徳(安城更生病院 消化器内科), 宮本 康雄(安城更生病院 消化器内科), 小屋 敏也(安城更生病院 消化器内科), 鶴留 一誠(安城更生病院 消化器内科), 岡田 昭久(安城更生病院 消化器内科), 馬渕 龍彦(安城更生病院 消化器内科), 細井 努(安城更生病院 消化器内科), 山田 雅彦(安城更生病院 消化器内科)
抄録 【はじめに】TS-1+Cisplatin併用療法は切除不能胃癌に対しての標準治療である.今回,我々は切除不能胃癌に対しTS-1+Cisplatin併用療法中に可逆性後頭葉白質脳症(Posterior reversible encephalopathy syndrome以下PRES)を発症した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.【症例】70歳,男性.2013年4月,近医より上部消化管造影検査異常にて当院紹介受診.精査の結果,進行胃癌,腹膜播種と診断し,TS-1+Cisplatin併用療法を開始した.腎機能障害を認めたため,TS-1(100mg/day)+Cisplatin(75mg)で行った.2コース終了後の6月末から左同名半盲を認めたため,頭部MRI検査を施行したが明らかな異常を認めなかった.7月中旬,3コース目の化学療法目的に入院となった.入院時に左同名半盲に加え,軽度意識障害,錯視を認めた.再度頭部MRI施行したところ,右頭頂後頭葉の白質主体にT2強調像,FLAIRで高信号を認めた.また脳波でてんかん性放電パターンを認めたためPRESと診断し化学療法を中止した.入院11日目の頭部MRIでは右頭頂後頭葉の異常信号域が皮質にも広がっていた.入院12日目,90秒間の強直性間代性痙攣を3回認めたが,抗てんかん薬使用によりその後痙攣発作を認めなかった.入院24日目の頭部MRIでは右頭頂後頭葉のT2強調像,FLAIRでの高信号が減弱し,浮腫の改善を認めた.左同名半盲,意識障害,錯視の改善を認めたため退院となった.【考察】本邦におけるCisplatinによる白質脳症の報告は1990年代から散見されるが,TS-1関連のPRESは自験例を含め12例認めるのみである.PRESの原因として以前から知られているのは高血圧性脳症や子癇等の内科的疾患である.PRESの神経学的所見として皮質盲,同名半盲などの視野障害,けいれん発作がある.診断としては,頭部MRI検査のFLAIR像で描出率が高く,脳波も有用である.化学療法中,視野障害等の神経症状をきたしたときはPRESも鑑別診断として念頭に置く必要がある.
索引用語 白質脳症, 胃癌