セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 061:

術前に診断し得た膵管内管状腺癌の一切除例

演者 呂 成九(JA愛知厚生連 江南厚生病院 外科)
共同演者 石榑 清(JA愛知厚生連 江南厚生病院 外科), 浅井 泰行(JA愛知厚生連 江南厚生病院 外科), 加藤 吉康(JA愛知厚生連 江南厚生病院 外科), 栗本 景介(JA愛知厚生連 江南厚生病院 外科), 田中 伸盂(JA愛知厚生連 江南厚生病院 外科), 松下 秀信(JA愛知厚生連 江南厚生病院 外科), 飛永 純一(JA愛知厚生連 江南厚生病院 外科), 千田 美歩(JA愛知厚生連 江南厚生病院 病理部), 福山 隆一(JA愛知厚生連 江南厚生病院 病理部), 黒田 博文(JA愛知厚生連 江南厚生病院 外科)
抄録 症例は82歳男性。右季肋部痛と体重減少を主訴に当院受診した。CT検査では肝内胆管・総胆管の拡張が認められ、血液生化学所見で高ビリルビン血症を認めた。ダイナミックCT検査で、膵頭部に最大径45mmの早期濃染する腫瘤と主膵管内の乳頭状腫瘤が認められた。EUSで、拡張した膵管内に管状乳頭状の充実性腫瘍を認めた。胆管腔内超音波法により、腫瘍による胆管の圧排像が確認され、減黄のため胆道ステントを留置した。同時に施行したERCPでは、腫瘍より尾側の膵管の途絶が認められた。透視下に膵腫瘍の生検を行ったところadenocarcinomaと診断された。以上より、膵管内管状腺癌(ITC, intraductal tubular carcinoma)の診断で膵頭十二指腸切除術を施行した。病理組織学的検査所見では、膵管内で分化傾向のあるback-to-backの管状構造を有する腫瘍が密に増生しており、腫瘍内に広範な壊死を認めたが、粘液産生所見を伴わなかった。免疫染色では、MUC2, MUC5AC, MUC6は全て陰性で、神経分化を認めず、MIB-1は平均30%程度で、ITC, pTis N0 CH(-) DU(-) と診断した。膵ITCは膵管内管状乳頭状腫瘍(ITPN, intraductal tubulopapillary neoplasm)に包括される膵悪性腫瘍である。ITPNはYamaguchi (2009)らにより報告された比較的新しい膵腫瘍の疾患概念であり、膵腫瘍全体の3%程度を占める稀な腫瘍である。ITPNの予後については通常型膵癌と比して良好とされているが、症例数が少なく不明な点が多い。今回我々は、術前診断でITCを疑い根治的手術を施行した一例を経験したため報告する。
索引用語 ITPN, ITC