セッション情報 一般演題(研修医(卒後2年迄))

タイトル 109:

アルコール性肝硬変に合併し肥満低換気の関与が示唆された肝性脳症の一例

演者 野田 健太朗(桑名東医療センター 消化器科)
共同演者 小島 昌泰(桑名東医療センター 消化器科), 宮下 一美(桑名東医療センター 消化器科), 泉 恭代(桑名東医療センター 消化器科), 大森 茂(桑名東医療センター 消化器科)
抄録 【症例】54歳、男性【主訴】意識障害【飲酒歴】日本酒4合/日、30年以上【現病歴】2003年よりアルコール性肝硬変にて当科外来通院中であり、近年は肝性脳症を繰り返し発症していた。また半年間で10kg程度の体重増加を認めていた。 2012年5月中旬にサウナ入浴中に意識レベルが低下し、救急搬送された。【理学所見】身長175.5cm、体重12kg、BMI40.6、羽ばたき振戦あり、球結膜に黄疸軽度あり、腹部は平坦・軟で圧痛なし【検査所見】WBC2800/mm3、Hb13.1 g/dl、Plt4.7x104/mm3、、PT46%、Alb3.0g/dl、T-bil2.8mg/dl, GOT46IU/l、GPT31IU/l、ALP570IU/l、γGTP44IU/l、NH3216μg/ml【胸部X線&CT】横隔膜の著明な挙上及び右下肺に肺炎を疑う所見あり【頭部CT】明らかな頭蓋内病変なし【入院後経過】入院時肝性脳症が認められ、分岐鎖アミノ酸製剤輸液等の加療が行われるも意識障害はさらに悪化し、高度のCO2ナルコーシスを合併したため、薬物治療に加えてNPPVによる呼吸管理を行った結果、意識レベルは回復し摂食可能となった。しかしNPPV中止後、無呼吸は明らかでないものの夜間睡眠時の高度のSaO2低下(<80%)がみられた。以上より、高度肥満により、特に夜間に横隔膜挙上及び胸郭運動が低下し低換気状態を来していると考え、簡易型NPPVによる睡眠時の呼吸管理及びダイエット(BW125kg→93kgに減量)を行い、以後肝性脳症の出現は認めず、睡眠状態も著明に改善し、退院可能となった。退院後約10ヵ月で腸腰筋膿瘍から敗血症を合併し死亡に至るも、この間明らかな肝性脳症は認めなかった。【考察】肥満低換気は著しい肥満とこれに伴う肺胞低換気を示す状態であり、その治療として減量の他に、近年NPPVの有用性が報告されている。自験例は肝性脳症出現後肥満低換気によりさらに意識状態が悪化した可能性、及びNPPVによる呼吸管理と十分な減量がなされた後は肝性脳症の出現を認めなかったこと等から、肝性脳症の発症及び経過に肥満低換気の関与が示唆された症例と考えられた。
索引用語 肥満低換気, 肝性脳症