セッション情報 シンポジウム「炎症性腸疾患の診断と治療 up-to-date」

タイトル S-16:

当院で経験した潰瘍性大腸炎に合併したColitic cancerの検討

演者 與儀 竜治(愛知県がんセンター中央病院)
共同演者 田近 正洋(愛知県がんセンター中央病院), 丹羽  康正(愛知県がんセンター中央病院)
抄録 【背景】近年、潰瘍性大腸炎(UC)に対する内科的治療の進歩は目覚ましく、重症例の減少や長期寛解例の増加が得られている。一方、長期罹患例に発生するUC関連大腸癌(Colitic cancer)は今後も増加が予測されることからその特徴を知ることは重要である。【目的】当院で経験したColitic cancerの臨床病理学的特徴を明らかにする。【方法】2000年から2010年の間に当院で経験したColitic cancer 9例[男/女=5/4;初診時年齢中央値46歳(範囲34~67歳)]に対し行われた診断および治療をretrospectiveに検討した。【結果】UC発病年齢23歳(13~43歳)、病型は全結腸炎型6例、左側結腸炎型3例で、Colitic cancer発生までの罹患期間は平均25年(4~33年)、8例で期間中5ASA製剤、ステロイド治療が行われていた。発見契機は、血便、腹痛など自覚症状5例、内視鏡サーベイランス中発見3例、その他1例であった。主占拠部位は直腸5例、S状結腸3例、横行結腸1例で、直腸の1例は3病変の同時多発癌であった。主肉眼型は0/2/3/4型=4/2/2/1で、大きさ4cm(1.5~10cm)、主組織型por/tub/muc=4/4/1、臨床病期cStage 0/I/II/IV=2/1/1/5例であった。治療は7例で外科手術、1例化学療法、1例ESDが行われた。観察期間35か月(0-84か月)で5例が死亡(4例原病死)、4例が無再発生存中である。【考察】当院で経験したColitic cancerの特徴は既報と同様に長期罹患例で発生し、全結腸炎型で多く、組織型は低分化癌や粘液癌が多くを占めていた。サーベイランス中に発見された早期Colitic cancerの予後は良好であった。現在、経過中に癌が発見された場合、全大腸切除術適応とされるが、内視鏡治療も選択肢の一つになり得ると考えられた。【結論】Colitic cancerは早期に発見することで、予後は良好であるため、内視鏡によるサーベイランスが重要である。
索引用語 colitic cancer, 潰瘍性大腸炎